街に暮らす
室崎富恵((福)いわみ福祉会 理事長)
1. はじめに
「桑の木園」は、島根県西部浜田市から8km国道を入った、農林窯業を主体とした山村、金城町にあります。人口は5,800人、零細な企業が多く、経済的には隣接する浜田市に依存したベッドタウンでもあります。浜田市は漁業を中心に発展してきましたが、その漁業も近年不振が続き人口も50,000人を割り、高速道の開通によって広島県との経済的な影響が増えています。このような過疎と高齢化の進む地域で、障害者の社会参加を実現するために、23年間取り組んできました実践の中から、街に暮らす場面を中心に報告したいと思います。
●意識を変える
昭和49(1974)年に「桑の木園」を開所したころは施設も少なく、保護中心で、職員も保護者も生活自立とか職業自立などは考えていませんでした。在宅で苦労した末、やっと施設に入れたのに、なぜまた地域=家に帰すのかという考えが関係者の間に強く、この意識を変えない限り、障害をもった人達は一生施設の中で暮らさなければならないことになります。
そこで、そうした意識を変えるためには地域(施設の外)で生活自立や職業自立の援助を実践し、利用者の前向きな姿勢や輝いた目を見せることで、職員の意識や考え方を変えることを思い立ってから7年、悪戦苦闘を続けています。
●地域の中で暮らす
先ず施設から離れ、生活の場を地域の中へ移しながら生活体験を重ね、作業実習や職場実習した実践例を図式化すると次のようになります。