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結婚生活をグループホームで援助できるようになれば、知的障害をもつ人達の人生はもっと普通になり、もっと幸せな人が増えるでしょう。

 

?E高齢者専用グループホーム

生活寮も20年を経過すると、毎年入居者の中に定年になる人が出てきます。年齢をとるということは、個人差が大きいことも事実です。現在私達の生活寮での最高年齢である69歳の男性はいたって元気で働いていますが、一方では60歳を過ぎた頃から急速に衰えて作業所に通えなくなった人もいます。できるだけ若い人と交じって暮らすことは大切なことですが、生活のリズムが異なり、生活時間にズレがでてくると、話が合わず、高齢者が孤独感に苛まれるようになってくるようです。

高齢者のグループホームは生活時間がゆったりと過ぎるようにし、日中は一緒にテレビを見て、昼食を共に食べる人がいて、外出や掃除などにヘルパーがつくようにすれば良いと思います。痴呆症になったら老人福祉でお世話してもらうのは私たちも同様ですが、人生後半の充実期をできるだけ長く、地域で楽しく豊かに暮らせてこそ福祉社会と言えるのではないでしょうか。

 

(2) ライフサイクルに応じて寮を変える

私は「東京都育成会」の「城東生活寮援助センター」の主任をしているのですが、私が担当しているエリアには、公立・民間合わせて24の生活寮があり、利用者は150人くらいです。これくらいの数になると、生活寮にもそれぞれ個性とゆとりができ、生活寮の間で利用者の移動ができやすくなりました。そうなると暮しの風通しがよくなり開放感が出てきます。

いくら努力しても理解し合えないいわゆる相性の悪い世話人、気があわない利用者同士は、どこにでもいます。そういう人たちは我慢するよりも、早めに他の生活寮に移るように助言しています。ある生活寮でうまくいかない人が、別の生活寮に移って一緒に住む人が変わってみごとに落ち着いたという例はたくさんあります。

人にはライフサイクルがあり、ある時期に満足していた暮しも、新しい人間関係を求めたり、今までとは別のものに興味を持ったりして変化を求める時期があるのが普通ではないでしょうか。その変化の軌跡こそが個性であり、人それぞれの人生の面白さと言えるように思います。今までの知的障害者の福祉にはそのようなゆとりはなく、ワンパターンの暮ししか提供できませんでした。

グループホームがたくさんできても、その場所でしか暮らせないのでは、息苦しいでしょう。グループホームがさまざまな形をもつようになり、気軽に移動できるようになったら、暮しの自由度と質は一段と高まること請け合いです。

 

4. バックアップシステムはどうあったらよいか

 

(1) アフターケアでは間に合わない

生活寮制度が始まってから10年間は、通動寮が生活寮を支援していました。昭和63(1988)年に東京都は、『共に暮らせる地域生活』を福祉の目標に掲げ、生活寮援助センター制度をつくりました。現在は東京都の補助金による生活寮援助センターが6ヶ所あり、更にそれに加えて「東京都育成会」が「区・市型生活寮援助センター」1ケ所を独自に創って援助しています。

 

(2) バックアップシステムの役割り

バックアップには大きく分けて二つの機能があります。

?@個々のグループホームに対するバックアップ(利用者や世話人への支援)

?A地域生活全体を推進し充実させる活動(グループホームの開拓・制度の改善、権利擁護・広報活動など)

そして、一つひとつのグループホームへの支援には、三つの要素が必要です。それは、?@緊急対応 ?A専門性 ?B権利擁護です。

 

 

 

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