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起床・就寝時間を決めて壁に張り出しているホームを見かけたことがありませんか。旅行やレクリエーションを企画すると、行きたくない人をも説得して連れ出したりするのもその一例です。このようなやり方は、グループホームのモデルを入所施設に求めているのです。せっかく普通の暮しをする環境にあるのですから、入所施設ではなく、同じ地域の同世代の人々の暮しがモデルであることを忘れてはならないでしょう。

 

(1) 多様な暮しを用意する

?@男女の住みわけ

平成6(1994)年に(福)全日本手をつなぐ育成会が調査をした結果では、全国の生活寮・グループホームで男女一緒に暮らしている所は、27.5%でした。「東京都育成会」の生活寮を調べてみると、男女が一緒に暮らしている寮が62.5%で、全国調査とは反対の結果になりました。男女が一緒に暮らしている方がにぎやかでなごやか、利用者に人気があるようです。もちろん同性だけの暮しを好む人もいますから、男女の住み分けは、入居者の好みで選択できるようになっていればよいと思います。

 

?A世話人との同居と別居

生活寮は、世話人と同居するタイプと世話人と別居するタイプがあります。自分はより家庭的な暮しがしたいから同居タイプを選ぶ、より自立した暮しを試したいから別居タイプを選ぶなど、利用者が選択できるようになっていればよいと考えています。

 

?B町内分散型生活寮

入所施設や通勤寮の暮しを経験していた人の中には、グループホームの入居をしぶり「なぜ私たちは、一生、共同生活をしなくてはならないのだろう」と悲しく思う人がいます。「グループホーム=4人が一つ家に暮らす」というのではなく、こういう人達のために、同じ町内に分散して暮らす形もグループホームの一つの形態として考えたらどうでしょうか。すなわち一つの住宅で共同生活をするのではなく、一つの町内で共同生活をするのです。「グループ居住」といいましょうか、それぞれが近くのアパートに分散して住み、大きめの食堂がある家が真ん中にあり、スープの冷めない所に世話人がいる。徒歩3分くらいで行き来できればプライバシーは保てるし、孤立感もなく必要最小限の援助を受けることができる仕組みです。一人暮しと違うところは、食事の提供、健康管理、金銭管理、人間関係の調整など生活寮と同様の援助がついていることです。この形はできるだけふつうに住みたいという利用者のニーズに応えることができ、比較的障害が軽い青年たちにたいへん人気があります。高齢になったら同居に切り替えていけばよいと思います。

 

?Cサテライトタイプ

私がスウェーデンで見たグループホームはどこもグループホームの隣りに必ず一人暮しの2LDKの住宅が付いていて1人で住んでいる人がいました。同一敷地内に援助者がいますが、必要がなければ会わないですむ、適度に自立した暮しです。援助は必要だけれども、集団生活が苦手で、1人で暮らすほうが落ち着く人はどこにもいるのではないでしょうか。この形は利用者ニーズに合い、かつ援助者にとっても安心できるものです。日本でもこれからこのタイプができればいいと思います。

 

?D結婚したカップルの暮らす生活寮

知的障害のある人たちのニーズ調査をすると必ず「結婚したい」という希望が1位か2位を占めます。ところが実際に結婚できる人たちはごく少数です。「結婚は完全に自立できてから」という思いが親や援助者に強いからでしょうか。しかし共に暮らしたいと望む2人が、生活力がないために、生涯独身で暮らさなければならないというのでは寂しすぎます。グループホームの援助があれば結婚できる人は大勢います。結婚への援助は特に難しくはなく、基本的には共同生活の援助と同じです。国のグループホーム制度は結婚しても利用できる制度です。

 

 

 

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