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(3) 住宅を確保するには

グループホームの住宅は、6畳以上の広さの「かぎ付きの個室」であることが絶対条件だと思います。ところが地価の高い東京で、このような住宅を探すのはとても難しいものです。

家探しのプロである不動産業者を通じて探す場合、東京では当たりハズレが多いことを覚悟しなくてはなりません。「障害者と外国人はおことわり」という業者はまだまだ多く、バリアは高いようです。こんな時理解のない不動産屋を説得しようとするよりも、良い不動産業者を手広く探す方が合理的だと思います。幸い、一度住宅を斡旋してくれた不動産業者に生活寮はたいへん評判がよく、家賃の滞納はないし、静かに暮らしてくれると喜ばれています。一度信頼を勝ち取ると、次にも紹介してくれるようになります。

住宅を獲得する方法の一つとして考えられるのは、障害をもつ子どものいる親で、アパートをもっている人に貸してもらうことでしょう。親の会の会員が生活寮に注目してくれるようになり、現在「東京都育成会」の生活寮103寮中24寮がこの方式です。

これを更に進めて「障害をもつ人自らが家主になる」ことを考えたらいかがでしょうか。これは親が持ち家を障害のある子どもに相続させることにより可能になります。生活寮がない時代は、障害のある子どもにせっかく家を残しても、1人では生活ができないし、家の管理もできないので、他の子どもに相続させたり、他人に貸したりして、障害のある人は自分の家に住み続けることができませんでした。生活寮制度ができた今日、親なき後は家を生活寮に提供すれば、住宅の管理と子どもの生活の両方を委託することができます。おまけに住宅の所有者として本人に家賃収入もあります。東京都では現在利用者本人が家主となっている生活寮が6寮できています。

障害基礎年金を持ち寄って共同所有の住宅を確保して生活寮をつくることも将来考えたいものです。

住宅がなかなか見つからなくて困った時に、区の広報紙に『障害のある青年たちに生活寮を貸してください』と広告を載せてもらったことがあります。たった1回の広告に4件の問い合わせがあり、その中から2件の住宅を借りて二つの生活寮をつくることができました。地域にはまだまだ豊富な資源が埋もれており、掘り起こされるのを待っているのです。

 

(4) 世話人を探すのには

「東京都育成会」の場合は、まず親が世話人をかって出て、生活寮制度を支えてきました。生活寮の良さの一つは、資格のない一般市民の誰でもが世話人になれるというところです。世話人が見つからなくて困った時は、近隣にチラシを配って世話人を探しました。3千枚配り、2人の世話人を見つけることができました。

こんなこともあって、都の生活寮ではさまざまな人が世話人として従事しています。

看護婦、保母、元施設職員、その奥さん、元作業所の職員、町の書道の先生、食堂の経営者、スナックのマダム、修道院のシスター、会社員、画家、鉄工所のベテラン工員、酒場の夫婦、セールスレディ、主婦、米屋さん、工務店の夫婦、会社経営者の夫婦、音楽の先生など、実にさまざまな人が、知的障害者と関わってくれるようになりました。

はじめて障害者と接する人が多く、とまどいながらも市民としての良識を基礎に、障害をもつ人の理解者になり、その地域生活を支えています。地域生活の専門家は一般市民です。良識の豊かな良い世話人を発掘し、地域生活の理解者・援助者を増やしていきたいものです。

 

3. もっとパーソナルな暮しを

 

グループホームを運営する時に忘れてはならないことがあります。それはグループホームの暮しは‘個人生活’を充実させることが目的であり、‘共同生活’が目的ではないという点です。日本には入所施設中心の長い障害者福祉の歴史があり、「個人援助」よりも「団体優先」が頭にこびりついています。

 

 

 

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