9. 一戸建4LDKの住人
このグループホームは、平成9(1997)年地域の人から申し出があり、新築同様の家を借りました。男性4人が住んでいます。一番の課題は「地域活動」でした。最初は近所の人たちの不安を招き拒否的な感情を示されたこともありましたが、世話人が同じ地区の人だったこともあって、一緒にする活動の中から徐々に理解が進んでおり、卜ラブルは今のところありません。最近、住人の1人が「一人暮し」をしたいと希望し、1DKに移りました。
この人についても日々の支援は、同じ世話人が担当しています。考えてみれば、障害をもつ本人と支援をする人の関係、これは目には見えないけれど非常に重要だということが言えるでしょう。世話人との関わりの中で、それぞれの人が輝いていて、その人らしさを発揮できる日常をつくっていくことこそ「人の暮し」だと思います。
そう言えば、私達のところで世話人の仕事をしている女性が短期間にきれいになるという現象は単なる思い過ごしでしょうか。
おわりに
今まで述べてきたように、当初はどのグループホームも、制度とそれにともなう補助金を活用するために、規則通りメンバーを揃え、規則通りに申請をしていました。
しかし、人間の暮しというものは、「4人が一つ屋根の下に」という箱的な形で、しかもそのまま居続けることを前提にしてはならないと思います。変化のある彼らの生活に合わせた柔軟な発想が求められるでしょう。言い換えればその人の個性とニーズに合ったオーダーメイドの支援が必要になるでしょう。
ノーマライゼーションが実現するかどうかは「本人の自己決定をどう支援するか」にかかっているのではないでしょうか。先日、あるセミナーで、私達のグループホームの実状を話したところ、会場から数々の質問がありました。その時、同じシンポジストとして横に座っていた人がこの制度をつくった当時の厚生省障害福祉課の専門官で、私の代わりに会場からの質問に答えてくれました。
「もともとグループホームというのは、ソフトとしての制度を意識してつくったのです。このようにグループホーム制度が変化していくことこそ、これをつくった我々の望むところです。」と。そして、さらに「制度化された当初、グループホームは未熟な状態でした。その後改められてはきていますが、今後長い年月をかけて、真に障害をもつ人本人の求めに応えられる制度として育っていくことを期待したい。」とも話していました。今の制度にしばられるよりも、利用しながら発展させることこそ我々の役割である、と再確認した次第です。