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ごあいさつ

 

前作『街に暮らす―スウェーデンの知的障害者福祉の実践―』が、障害をもつ人達の親・家族、福祉関係者の間で予想以上の反響をもって迎えられたことは、企画した者にとって望外の喜びでした。また、日頃障害をもつ人とはあまり関わりのない方々が大勢このビデオを見たという話を聞いて、私達のもう一つの意図がかなえられたように思いました。

一方、予想した通り、「スウェーデンの実践は将来を展望するためには参考になるかも知れないが、日本の現状からはあまりにもかけ離れている。」というご意見も多数よせられました。

この声におこたえする意味もあって、当研究会では新しいビデオと報告書を作ることにしました。そこで、日本の知的障害福祉の現状を踏まえた上で、その地域生活援助の先駆的な試みを取材し、編集しようと企画しました。

そして、完成したのがここにお届けする『街に暮らす―知的障害者の望ましい自立を求めて―』です。

ビデオの制作にあたって、第一に心掛けたのは、知的障害をもつ人達、親・家族の本音や率直な意見をそのまま紹介することでした。

第二は、何といっても、現在10万人を超える人達が生活している入所施設の日常をできるだけ自然な姿でお見せすることでした。入所施設にこのような形でカメラとマイクが入って取材し、これが公開されるのは、恐らく日本では初めてのことでしょう。

先駆的な地域生活援助の実例は、重い障害をもつ人達のグループホームを選びました。不足がちの予算、限られた人手、十分とは云えない援助体勢の中で、街に暮らすための援助をしている人達の努力を見て頂きたかったからです。それと同時に、街に暮らし始めた知的障害をもつ人達の表情の変化や地域にとけこんでいく姿も見てほしいと思います。

グループホーム制度は、ここ数年間で多様化し、発展しています。親・家族、関係者の方には、報告書の豊富な実例からいろいろ学んで頂きたいと思います。

なお、取材した映像、音声は慎重に吟味し、内容も幾度か大勢の目で確認しました。表現も誤解を招かないよう注意したつもりです。それでもなお、中には思い違いもあろうかと思います。ご批判ご指摘を乞う次第です。

最後になりましたが、このビデオに登場されたすべての皆さん、この企画の実現に多くの支援を頂いた日本財団、テレビマンユニオンのスタッフ、報告書の執筆にご協力下さった皆さんに、心から感謝いたします。

 

日本財団

 

知的障害者福祉研究会 委員長 廣瀬 貴一

 

 

 

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