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したように、実験室円錐貫入試験における円錐貫入力のクライテリアは、試料によらず概ね一定の値を示している。このことから、最大粒径を調製した試料による円錐貫入試験については、試料によらない統一的な円錐貫入力のクライテリアを設定できると考えられる。そのため次年度以降は、粘着力を有する試料を迅速に篩い分けする方法を研究し、荷役現場において最大粒径を調製した試料で円錐貫入試験を実施することの可能性をも探求する必要がある。

粘着力を有する試料の篩い分けは、本年度の「裏漉し水分値試験」により経験することができた。円錐貫入試験に30kgの試料を要するとすれば、裏漉し水分値試験の経験からは、篩い分けにより最大粒径19mmの試料を得ることは容易ではない。よって、本研究で開発する試験法において最大粒径の調製を行うとすれば、最大粒径は19mmより大きな値とする必要があるであろう。試料の最大粒径は、最大粒径が大きければ篩い分けにより円錐貫入試験用の試料を得ることが容易になるが、最大粒径が過大になれば円錐貫入力のクライテリアの試料によるばらつきが大きくなる可能性があることに留意し、円錐貫入試験装置の円錐の大きさを考慮して決定する必要がある。

ニッケル鉱の剪断強度に関する実験の基礎は、より多くの試料を準備し、試料が均一になるように攪拌等の作業を充分に行い、試料に水分を加えた場合は充分に浸透させることである。本報告書にも、横軸に試料の水分値、縦軸に試料の剪断強度(円錐貫入力、剪断抵抗角・粘着力)を示した図が多く用いられているが、これらの図では一般に、横軸の水分値の方が計測精度が不足しがちである。よって、次年度以降の実験では、水分値をより高い精度で計測することも肝要である。また、試験を行う試料の水分値の範囲についても、本年度の成果に基づき、より適切なものにしていく必要がある。

 

7.3.  まとめ

本年度は、円錐貫入試験、一面剪断試験、試料の最大粒径と水分値の関係に関する試験及び荷崩れの数値解析を行うことにより、荷役現場における円錐貫入試験により荷崩れの危険性が評価できる可能性を示した。

次年度の研究においては、荷役現場用の試験方法は二種類想定すべきことが分かった。一つは、第6章に示した現場円錐貫入試験であり、この試験については締め固め方法の定量化について研究する必要がある。もう一つは、今年度実施した実験室円錐貫入試験のような試験を荷役現場で実施するものであり、この試験については粘着力を有する試料の篩い分け方法について研究する必要がある。次年度は、試料によらない統一的な円錐貫入力のクライテリアの設定において問題が少ないと考えられる後者の試験方法を主として研究を行う。

 

 

 

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