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第7章 結言

 

7.1. 本年度の研究成果概要

本年度は、現場及び実験室における円錐貫入試験、一面剪試験を実施するとともに、試料の最大粒径と水分値の関係について実験的研究を行った。そして当初の計画通り、一面剪断試験結果に基づく荷崩れの数値解析により水分値のクライテリアを決定し、これを現場試験用試料の水分値クライテリアに換算し、現場円錐貫入試験結果等に基づき円錐貫入力のクライテリアを決定するという一連のプロセスを実施することができた。よって本年度は、研究のための各種試験法を概ね確立したと言える。

本年度は当初の予定には無い項目であるが、4.6節で述べた通り「裏漉し水分値試験」を実施して、最大粒径の違いによる水分値の換算について検討した。結果として、通過重量百分率の計測及び所定の粒径範囲の試料が含み得る水分値の計測を行えば、水分値の換算を行うための値が得られることが分かった。水分値の換算は本研究の重要なポイントの一つであり、換算方法に見通しが得られたことは大きな成果である。

ニッケル鉱は水分値が大きくなると粘着力も下がり、その剪断強度は締め固めの影響を受け難くなってくる。荷崩れが問題となる水分値付近において、ニッケル鉱の剪断強度が締め固めの影響を受けるか否かは、目標とする荷崩れ危険性評価用現場円錐貫入試験の基本に係わり重要な問題であるが、本年度の研究成果からは、締め固めの影響は無視できず、本年度実施したような現場円錐貫入試験については、締め固めの定量化を検討する必要があると考えられる。

 

7.2. 今後の課題

本研究の目的である荷崩れ評価用円錐貫入試験を当初の予定通り試料の篩い分けを行わず実施するとすれば、締め固めの問題を除き、現時点での見通しは以下の通りである。

(1)積み荷役現場における円錐貫入試験により貨物の荷崩れ危険性を評価することは可能と思われる。

(2)円錐貫入力のクライテリアは試料の粒径分布により変わると考えられる。よって、試料によらない統一的な円錐貫入力のクライテリアは、安全側の値でしか設定できない可能性が高い。

本研究においては、試料によらない統一的な円錐貫入力のクライテリアの設定が重要である。仮にこのクライテリアが安全側の値でしか設定できない場合、荷崩れ評価用円錐貫入試験結果に基づけば、大きな塊を多く含まないニッケル鉱はかなり低い水分値で運送すべきとの結論に達する。よって、運送・荷役実務において受け入れ難いものになる可能性がある。そのため、各種(各産地)のニッケル鉱の円錐貫入力のクライテリアのばらつきを把握することは重要であり、今後の研究課題の一つと考えられる。

一方、荷役現場において試料の水分値を調製せずに篩い分けが実施できれば、最大粒径を調製した試料による円錐貫入試験を荷役現場で実施することができる。表5.4.1に示

 

 

 

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