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第2章 ニッケル鉱荷崩れ評価技術の現状及び問題点

 

2.1. 過去の研究成果及び土質工学(地盤工学)との相違

ニッケル鉱の剪断強度及び荷崩れ危険性については、これまでにも実験室的な研究がなされており、2.3節に示した報告がある。ばら積み貨物の荷崩れは、土質工学における斜面の上砂崩れと類似の問題であり、これらの文献の他にも土質工学関係の資料は多くあるが、ここでは挙げない。

土質工学における斜面の安定性評価とばら積み貨物の荷崩れ危険性評価の相違は以下の通りである。

(1)土質工学における斜面の安定性解析では、降雨の際の土中の水の流れが大きな問題となるのに対して、ばら積み貨物の荷崩れでは、航海中の貨物の水分値の変化や貨物内の水の流れは特殊な場合を除いて殆ど問題にならないこと。

(2)土質工学における上の剪断強度の計測においては、試料をあるがままの状態で切り出すことが重要であるのに対して、ばら積み貨物は、元々荷役の際に攪拌された状態であり、いわゆる「練りかえした試料」に相当するため、試料の抽出の際に試料の粒子の配列を乱しても殆ど問題とならないこと。

(3)ばら積み貨物の荷崩れでは、斜面の形状は貨物の荷繰りの結果として得られ、斜面の傾きは、形状に加えて船体の動揺を考慮する必要があること。

以上を考慮すれば、参考文献に示した過去の研究におけるばら積み貨物の荷崩れの評価の際に、試料の剪断強度を計測し、その計測結果を用いて斜面安定性の数値解析(荷崩れ数値解析)を行い、その危険性を評価しているのは妥当であると言える。また、数値解析の結果得られる臨界安全率のクライテリアを、道路等の構造物の工事中の値と同様に1.2に設定しているのも妥当と言える。

剪断強度の計測法としては、一般には三軸圧縮試験が推奨されるが、ニッケル鉱については三軸圧縮試験結果と一面剪断試験結果が良く一致していることから(3)、荷崩れ危険性評価の基礎となる剪断強度は、一面剪断試験で計測すれば良いと言える。

2.2. 本研究の課題

これまでの研究により、一面剪断試験で水分値と剪断強度の関係を計測し、計測した剪断強度を用いて荷崩れの数値解析を行うことにより、荷崩れ危険性の観点から水分値の上限を決定する方法が示されている。 しかし、以下の点については、さらに研究する必要がある。

(1)実験室おける一面剪断試験は、一日に一つの水分値について実施するのが限界である。そのため現在の評価法では、水分値の上限を決定するのに少なくとも一週間程度の期間を要する。よって、迅速な評価法の開発が求められる。

(2)一面剪断試験では、供試体の大きさにより試料の最大粒径が制限される。これまでの研究では、飾い分けによって得られた一面剪断試験用の試料について水分値

 

 

 

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