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た状況を想定すれば、試験に必要な装置一式を一人が一回に持てる程度にすることが望まれる。研究においては、こうした点にも留意する必要がある。        

1.3. ニッケル鉱の安全運送と本研究の位置付け

本研究の目的とする試験法が開発されれば、輸送しようとするニッケル鉱が充分な剪断強度を有するものか否かを荷役現場において判定できるようになる。荷崩れの危険性からみて貨物の剪断強度が充分か否かは、貨物のパイルの形状にもよる。そのため、荷繰りを行うか否かによっても、剪断強度のクライテリアは変わる。よって荷崩れを防止するには、まず、可能な限りの荷繰りを行うことが重要である。荷繰りには、図1.1(A)に示すように貨物のパイルの傾斜を小さくする方法と、(B)に示すように貨物のパイルの規模を小さくする方法がある。(A)の方法は非粘着性物質の荷崩れ防止にも有効であるが、(B)の方法は、ニッケル鉱のような粘着物質の荷崩れ防止に有効である。しかし、荷繰りを行ったとしても、ハッチの直下を除く甲板下には貨物の斜面は残るため、貨物には一定程度の剪断強度が必要である。

 

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輸送しようとするニッケル鉱が、たとえ貯鉱場において充分な剪断強度を有していたとしても、荷役中に貨物の水分が増加して剪断強度が低下すれば、荷崩れを起こす危険性がある。そのため、荷役中には貨物の水分が増加しないよう措置する必要がある。バージを用いた沖荷役を例にとれば、具体的には、降雨の際には荷役を中止し、船倉のハッチを閉めるととに、バージ上の貨物にはカバーを掛ける等の対策を取ることが肝要である。また、バージ輸送中に貨物に海水が侵入するのを防ぐことも重要であり、特に、図1.2に示す平型バージを用いる場合は、充分に静穏な海象下において荷役を行うことが重要である。

 

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以上をまとめると、ニッケル鉱の安全運送のためには、以下の対策が必要と言える。

● 荷役中における貨物への水の侵入の防止

● 雨中荷役の禁止

● バージ上の貨物への海水打ち込みの防止

● 可能な限りの荷繰り

● 本研究で開発する試験法に基づく貨物の剪断強度(水分値)の評価

 

 

 

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