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付録1

粘着性ばら積み貨物の安全輸送に関する調査研究

平成9年度報告

 

第1章 緒言

 

1.1. 研究の目的

粘着性物質であるニッケル鉱は、水分値が一定の値を超えると荷崩れの危険性が急激に高まることが知られており、実際に我が国においてもニッケル鉱運送中のばら積み船の異常傾斜事例が報告されている。ニッケル鉱を安全に運送するためには、水分値の上限を決定する等、貨物が有する荷崩れの危険性を評価することが必要であるが、ニッケル鉱の荷崩れは液状化とは異なる現象であるため、液状化物質に対する運送許容水分値決定法は適用できず、未だ、貨物運送の実務に用いることのできる評価方法は開発されていない。

安全運送のため水分値の上限を決定するには、水分値を変えて貨物の剪断強度を計測し、得られた剪断強度を用いて荷崩れの可能性を評価すれば良い。ニッケル鉱等の粒状物質の剪断強度を計測する方法には、一面剪断試験や三軸圧縮試験といった実験室試験があるが、これらの試験は現場には適さず、また、かなりの時間を要することから、実際の船積み現場で用いることができる簡便な試験法の開発が求められている。本研究の目的は、粘着性ばら積み物質であるニッケル鉱の荷崩れ危険性を評価するための現場試験法を開発することである。

陸上では、地盤の強度を簡便に評価する方法として円錐貫入試験等が用いられる。二ッケル鉱の荷崩れの危険性を評価するにも、基本的には同様の方法を用いれば良いが、締め固め等試料の調製方法、実験の回数及び解析方法、荷崩れ危険性に基づく評価基準等は、本研究により決定する必要がある。試験法が開発され、試料によらない評価基準を決定することができれば、この試験法及び評価基準を用いて、各試料について荷崩れが危険となる水分値を求めることができると考えられる。

 

1.2. ニッケル鉱の運送・積み荷役状況

ニッケル鉱は、フィリピン、インドネシア、ニューカレドニアから我が国に、毎年約400万トン輸入されている。主な積み出し港を表1.1に示す。

 

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主として用いられている船舶は、載貨重量二万トンから四万トン級のばら積み船である。そのため、年間百数十航海、ニッケル鉱を積載したばら積み船が我が国に入港している。

ニッケル鉱の積み出しの多くは、沖荷役で行われる。即ち、岸壁では月字に貨物を積み、曳船で艀をばら積み船の近くに配置し、船のグラブで艀から船倉に貨物を入れるのである。こうした荷役形態が多いため、船の乗組員が開発した試験法を用いて積載しようとする貨物の荷崩れ危険性を調べるといっ

 

 

 

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