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実習を終えて

 

山城 恒雄

 

沖縄のコスモスは春に咲くと、内地(本土)からやってきた私が知ったのは去年の事である。去年ほど妙に思わなくなったのは馴れのせいだけではない。しばらくその様子を眺めていると、その明るい色合い、 一直線な立ち姿は春先にこそふさわしいように思えてくる。本土の秋のコスモスも風情があろうが、亜熱帯的な沖縄では、コスモスは春が似合うようである。

琉球大学のキャンパスでも、教養部の駐車場や東口のあたりで、二月はコスモスが満開である。季節になったら何本かもらってこようと話し合っていたが、実習の終わるほうが一足早かった。「春を呼ぶ」沖縄のコスモスを、東京からの御遺体にしっかり見ていただけなかったのは少々心残りである。

思えば、半年の実習中に様々な種類の花が実習台の枕元に置かれていた。バラ、カーネーション、ガーベラ、ヒマワリ、トルコキキョウ……多くの花は殺風景な実習室をどれほど明るくしたことだろう。隣の班のあの花がきれいであるとか、今はどの花の季節であるとか、花にまつわる話題も実習室の空気を暖かなものにした。

しかし、そのような花は、私の考える限り、およそ「御霊前」向きではなかった。私の班で花瓶に納まった花は、そのまま自分

 

 

 

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