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をもって診療に取り組まなければ真の医師にはなれないということを実感しました。その事を教えてくださったみなさんに感謝します。

 

私の人生観を変えた

 

杉山 弘美

 

三年の四月からの四ヶ月間は、私が今まで過ごしてきた大学生活の中で、 一番密度の濃く充実した時間だった。しかし自分としては、将来の医者としての生活を少しばかり経験できた気がして、自分は医学生なんだということを再確認した。そしてこの解剖学実習は、自分の人間観なるものを大きく覆した。結局人間は、自分を含めて、みんなこれだけの部品で生きているのだ。しかも、その部品は大変精巧で、在るべきものが在るべき所に存在し、互いにうまく働きあって、様々な機能を生み出している。決められた狭い体の中で無駄がないのだ。ロボットのようで、ロボットじゃない。それに、みんなと同じ部品からできていながら、一人一人全く違う人格を持っている。脳と体の連係が恐ろしくうまくいっていて、人間特有の癖や秘めた力が造りだされる。そして私もその人間の一人なのだ。

解剖学実習は、医学部に入るにあたり、最も楽しみにしており、関心があったものの一つといっても過言ではない。『こんなものらしい』という噂はいくらでも聞いていたが、

 

 

 

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