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とても浅はかだったと思います。確かに今でも解剖は怖い。けれど、頸部の血管の意外な太さに始まり、各神経叢の複雑さ、大動脈弓壁の厚さ、肝臓の大きさ、脳神経と脳のつながり。胎生期の名残の肝円索、内側臍ヒダなどの存在は、忘れられないぐらい印象的でした。まだまだたくさんあるこれらの感動、驚きを放棄しようとしていたことと、それを理由に歯科医になることをも放棄しようとしていた自分が、今ではとても恥ずかしいです。

「自分の力だけではなく、周りのいろんな人の協力により、歯科医になるのだ」と、教授が言っていました。大学に入る段階から、両親をはじめ、周囲の先生、友達に支えられ、励まされながらきた私は、解剖学実習を通して今度は全く面識のない人の協力を受けました。その協力を無にしないよう、自分に課せられた責任の重要性と周囲の人の期待を認識し、これからくじけそうなことがあっても、石にかじりついてもという気持ちで、歯科医になろうと思います

最後に。生意気な私を今まで指導して下さった解剖学の先生方と、怠惰な私を引っ張ってくれた解剖班の人々、そして無償の奉仕で私を支えてくださった献体者の方に、有らん限りの感謝を込めて御礼を申し述べます。

 

 

 

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