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涯あの名前さえ知らない究極の篤志である御遺体に、そしてその御遺族に感謝の意と尊敬の意を表したいと思う。またともすれば単に苦しいだけの実習を楽しく、雑になりがちの作業を厳しく、そして何より全く知識の無かった我々を手をとりながら御指導下さった先生方、教室の皆さんに感謝しております。

 

解剖学実習を終えて

 

角田 初恵

 

昨年の十月から始まった解剖学実習ですが、終わってみると、とてもはやかったように思います。その、長かったような、短かったような実質三ヵ月間、肉体的よりも、精神的な辛さが多く、そしてその中で、自分が歯科医になるという意識、決意が強固となったように思います。

解剖学は、大学に入学する以前から、私の中での心の重荷となっていました。歯科医になりたい。けれど、解剖が怖い。私は歯科医になるにあたって、きちんと人の体の構造を理解しなければならないだろう。けれど、人を解剖するのは怖い。私は解剖ができるのだろうか。人の体に刃を入れることができるのだろうか。そんなことばかり考え、とまどい、その責任に押し潰されそうになりました。解剖をしてみて、どうしても怖くてできなかったら、思いきって学校をやめてしまおうとさえ思いました。

そして、解剖が終わった今、以前の自分が

 

 

 

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