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解剖学実習を終えて

 

本当に「有り難うございました。」と

言える日が来るまで

 

佐々木 剛

 

正直に言うと、僕は、今は胸を張って「有り難うございました。」と言える身分ではないのかもしれません。むしろ「御免なさい。」と言わなければならないはずであると、実習が終わった今も感じています。

別に実習を怠けたなどという馬鹿げた行為をしたわけではありません。しかしそう感じるのは、正確には自分自身わからないのですが、それまでは全く知らなかった赤の他人である御遺体に、この未熟な自分が!この世間知らずの尻の青い自分がメスを入れたという事実に対する、医学生である以前にヒトとしての罪悪感が、心の中で葛藤しているためだと思います。

しかし、この様に感じることは自分自身、大切なことであると思うし、そのことによって得られた経験は、後々、赤の他人である患者さん達をケアし、心と体の両面を良い方向へと導く手助けをする医師になろうとしている自分にとって、絶対必要なものであると思うのです。

それ故、「御免なさい。」ということを考えた自分自身を大切にしたいと思うし、将来自分が医師になって、この実習を振り返った時にこそ、表面的ではなく心から御遺体と、そ

 

 

 

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