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献体の動機

木村 キクヨ

医聖会様

平成四年二月二十二日讀賣新聞『気流』に「社会への恩返し献体登録」を讀み、献体のことを知りました。死後この体でお役に立つことを知りうれしく思ひました。手續などわからないまま今日に至りました。八十才になりボケないうちにと思ひ、福祉の人に聞きました所、病院の先生におたずねしたらといわれ、早速友人の主治医の先生にお願ひ致しました。身寄りがないので会員にしてもらえるかと心配しておりましたが、一月八日会員証をいただきホッと致しました。

私事で申し訳ございませんが、一昨年たった一人の肉親の弟が白血病で亡くなりました。七十一才でした。広い枯野の眞ん中に一人ポツンと立ってゐる様な気が致しました。私も昨年両膝変形性関節症で立てなくなり、両膝を手術し人工関節を入れました。お陰様で歩ける様にはなりましたが膝は九十度しかまがりませんし、膝をつくことも出来ません。バスも一人では恐くて乗れません。そんなわけで老人会のお手伝いさえも出来ず、何も役にもたたず死ぬのを待つばかりと悲しく思っておりました。感想文集を讀ませていただき身にあまることと有難く思ひました。何の希望もない私にも心のより所が出来ました。これからは体を大切にして事故などあわない様気をつけて、出来るだけきれいな体でお役に立つ日をたのしみに過して行きたいと思っております。

無学で大正時代の小学校しかでておりません。かな書きばかりで、文章もしどろもどろで分かりにくいことと存じますがお許し下さいませ。献体の動機のつもりで書きました。

平成9年1月16日

 

 

 

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