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献体のすすめ

福田 昌之助

かねて私共の念願であった献体を、昨年七月十三日、妻と一緒に産業医科大学の医聖会に申し込みました。医聖会の担当の方も非常に喜ばれ、「有り難うございます。まだまだ献体される方が少ないので、ほんとに助かります」とお礼を言われ、却って恐縮いたしました。以下、その手続きと内容を順を追って簡単に述べましょう。

先ず、産業医大1号館のエレベーターを利用して五階で降り、医聖会を尋ね、事務所で申し込み用紙を貰います。なお詳しいことは担当の方が説明されますが、大事なことは近親者の同意を得る事と、「献体は無条件、無報酬」ということです。内容については、第一解剖学教授北條暉幸先生の『献体について』のパンフレットの文より抜粋させていただきましたので以下…

「医学生が最初にメスを握る解剖学実習、四カ月もの長い修練の日々。学生の感想文は献体者への感謝の気持ちで満ちあふれております。皆様のお気持ちは尊いものです。ありがたく感謝申し上げます。昭和三十年初め頃の献体運動の初期から知っていますが、皆様から御理解いただき感謝申し上げます。(一部省略)解剖学への献体は欧米では医学の専門分野の基礎知識だけでなく広く世にも受け入れられ、生活の一部とさえ言えるところがあるようです。このことは医学への人々の理解度が高いことと無関係ではないようです。(一部省略)なにとぞ御理解いただきよろしくお願い申し上げます。」以上。

医学生は解剖学をマスターしなければ医者にはなれないと言うことです。何一つ世に貢献出来ない私どもにとっての献体は、一社会人としてのささやかな心尽くしだと思い、この度歓んで老骨を献納する約束事が出来ました。

一週間後、八月十九日付けを以て、献体者登録証および医聖会会員証カードが、郵便物で送付されて来ました。ちなみに私の会員番号はNo.951554ですが、上二桁の95は西暦一九九五年の95で、つまり下四桁からの数字が、医聖会に登録された個人の数番号になります。ですから私の場合、千五百五十四番目に当たる訳です。その日、看護婦として携わっている妻が、勤務から帰ってくるなり「マーやっと来たネー、これでまた一つ念願が叶えられた、よかったー」と相好を崩しながら喜びました。

合掌

平成8年12月9日

 

 

 

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