ワークショップ
?「写真はアイデンティティを復活させる」
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◆坂本勇(さかもといさむ)
阪神淡路大震災「震災記録情報センター」事務局長
■プロフィール
TRCC東京修復保存センター(1988年6月創立)代表(ペーパー・コンサベーター)
IADA(国際修復保存専門技術者協会)AIC(アメリカ修復保存学会)など会員
1995年1月30日 地元NGO救援連絡会議文化情報部設立
1995年8月1日 震災記録情報センター設立
その他大学、地方公共団体所蔵各種貴重資料の修復保存、資料及び保存環境委託調査、文書館設備のコンサルティング等を行ってきた。
文化庁主催指定文化財修理技術者講習会、国立史料館主催史料管理学講習会、駿河台大学、東海大学などの講師・非常勤講師を担当。
■要旨
写真が誕生してから160年ほどの歴史しかないが、写真には文字や図画とは比較にならない情報量が込められていることがあり、無限の可能性がある。
アイデンティティ復興にどれほど寄与できるか未知数のところが多いが、阪神大震災で被災された方々の声を契機に始まった小さな活動について考えたい。
1.雨に打たれていた「写真アルバム」
阪神間の街を東から西に歩いたのは地震から1週間後であった。倒壊した家屋から溢れ出るように散乱する家財の中に「写真アルバム」が顧みられずに放置されていたことが強烈な印象であった。
震災記録情報センターの活動のひとつとして罹災者の方からの電話相談で「解体前の最後の建物の写真」「懐かしの風景、震災前の普通の身近な写真」を求める声があり「思い出探し」「平凡な記録写真の収集・保存・公開の呼びかけと収集作業」始まった。
写真提供情報としては約8000枚の震災前後のものが集まり、そのうち2000枚について簡単な撮影記録を付けてフォトCD化を終えた。
2.写真の不思議な魅力
震災に直面しなければ、これほどまでに「普通の平凡な写真」に眼を向けることはなかっただろう。
一枚の写真には、何冊かの本によっても及ばない「消え行く記憶を甦らせ、遡求させてくれる力がある」ことを実感している。
すでに様々な経験を蓄積してきている諸外国や国内の事例を参考にしたい。
3.消え行く平凡な写真
本の歴史とともに図書館が生まれ、広く保存と利用に便利な制度が整備されたが、写真については特殊なものを除いて広く利用と保存を支えるような制度の確立には至っていない。
蓄積された写真を市民が十分に活用し、地域や個人のアイデンティティの復興や町づくりに役立つ「写真アーカイブズ」のような基本的な制度の整備が必要であり、多くの方の知恵が求められている。
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