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事例報告?

「生活と芸術」

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◆川□良仁(かわぐちりょうにん)

全興寺住職

 

■プロフィール

 

1947年生まれ。1980年「平野の町づくりを考える会」結成。以後、事務局を務める。

現在、全興寺仕職。

 

■要旨

 

町はアート・町づくりと芸術

 

大阪市の東南のすみに位置する平野は、大阪市内のどこよりも古く形成された町である。平安時代より交通の要衝として発展、戦国時代には町の安全と自治を守るため集落のまわりを二重の堀でめぐらした「環濠自治都市・平野郷」を形成し、近世には、河内木綿の集散地として全国に名をはせた。幸い、今次大戦の戦火をまぬがれ江戸期に完成した碁盤目の町割りや、江戸中期に始められた夏祭りなどの伝統行事の数々も生活の中に定着し、大都市大阪の中にあって今なお歴史が息づく風土と景観を残している。

そんな平野にあって、歴史ある町を見直し個性のある住みよい町づくりをしようという気運が盛り上がったのは、昭和55年9月のこと、66年間庶民の足として親しまれてきた南海平野線の廃止に伴って、壊される運命にあった八角形の駅舎の保存再生運動に端を発している。

「平野の町づくりを考える会」が結成され、以後今日に至るまでの17年間、『歴史のぬくもりを生かす町づくり』をテーマにハード、ソフトをとりまぜて町づくり運動をさまざまに展開してきた。特に平成5年より町の民間施設を無料で開放して始めた「町ぐるみ博物館」運動は、今年10カ所の「だんじり館」が加わり、従来の9カ所にプラスして合計19カ所もの全国でも類を見ない館数の規模になっている。

また昨年より統いて今年も、7月に開催された「モダン de 平野」という催しは、町をアートにするというコンセプトで、平野の町をテーマにアーティストと住民が共同で芸術活動を町中で展開した。

アーティストが完成した作品を町の中で一方的に提示するに止まっていた従来のパブリックアートとは違い、このアートプロジェクトでは、アーティストが町に住む人達との触れ合いの中で、その場でしか成立しない作品を完成させて行く。一方住民は、「アート」という新鮮な角度から、日ごろ見慣れた町を再発見するとともに、さらには住んでいる人自らがアーティストとして町の中で作品を発表する。そのような「モダン de 平野」の取り組みは、従来の町づくりにおける必要な要素である「ハード」と「ソフト」に加えて、「アート」という新たな切り口での町づくり運動である。

 

 

 

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