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7台を中継、延長lkm以上に及ぶホース延長を実施する。消火活動にあたるため、各隊のホース延長状況を確認しつつ隊員と共に水笠通に向かっていたところ、一般市民より救助の要請があった。男性1人(通報者の息子)が倒壊家屋の下敷きになっているとのことであった。無線にて大阪隊の現地指揮本部に速報し、通報者の誘導のもと隊員2人と現場へ向かう。余震の続くなか、細心の危害防止措置を講じ倒壊家屋内に進入、瓦礫の下にわずかに見える男性の臀部を発見した。だが、消火隊として出動した消防車両には救助資器材は積載しておらす付近停車の消防車より借用したバールと斧だけの作業になった。また事前に任務指定を受けた他隊への増強要請は望めず少人数で人力のみの救助作業は困難を極め、この時ほど資器材を持たない消防隊の非力さと歯がゆさを痛感したことはなかった。作業開始しておよそ1時間半、苦闘の末倒壊した1階天上の下敷きとなっていた要救助者を救出。(しかし、無念にも死亡状態での救出となった。)

救出現場を警察に引き継いだ後、水笠通4丁目一帯の火災現場に転進したところ、そこにもまさに消防隊と燃え盛る火勢との死闘が繰り広げられていた。だが、我々の最大の武器である筒先も2口が限界で、しかも少ない河水より取水、車両7台で中継しているため水量、水圧不足のうえ、度々起こる余震のため半壊状態にあった建物が次々と倒壊、筒先部署障害となり満足な放水体制がとれない状態での消火活動となった。このため強力な火力に後退を余儀なくされ防御ラインを設定しての延焼阻止を図るのが精一杯であった。

夜を徹しての消火活動の後、翌18日ようやく鎮火状態となった。広大な焼け野原を見渡し、いままでに経験したことのない消防の敗北を痛恨すると共に、今後の震災対策については図上での計画的、理想的な考えを排除し考えうる最悪の事態を想定した実戦的な震災対策を樹立し、これに見合う消防力の充実強化実施の必要性を実感した。

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他都市応援隊の受入れ事務に携わって

神戸市消防局警防課 消防司令 藤井章三

 

兵庫県南部地震による災害は、戦後最大規模であり、他都市から最大で、506隊2,434人の応援を受け事態の収拾を図ることができた。

今回の応援隊は、北は北海道から南は九州鹿児島県まで、全国42都道府県から約450消防本部にまで及んだ。このような大規模な応援は、自治体消防発足以来始めてのことで、様々な問題点を残す結果となった。中でも、応援隊の掌握並びに統制管理については、本部並びに各署の管理能力を遙に超えており、又予想もしていなかったことも手伝って、応援隊の掌握すら不完全なものとなった。

この度、他都市の応援隊の受入れ事務に携わって得た教訓は次の通りである。

1 応援体制の見直し

今回のような地震災害に対する応援は、一刻も早い対応を要する。そのためには、近郊の消防本部から、国の出動要請をまたず自動的に応援する体制も整備する必要がある。

2 応援隊の受入れマニュアルの整備

今回神戸市消防局では、受入れマニュアルが整備されていなかったため、応援隊の掌握ができなかった。そのため、応援隊の部隊管理や適切な活動指示が行えす問題を残した。又、活動記録用紙等が整備されていなかったため、各隊の活動状況も的確に把握することができなかった。もし、この用紙が整備されていれば、もつと早く防御図等

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