日本財団 図書館


くり事業による防災センターの整備等を推進している。

(略)

2-4 近年発生した災害におけるボランティア活動

(1)阪神・淡路大震災

阪神・淡路大震災においては,地震発生直後から,大勢のボランティアが各地から駆けつけ,救援物資の搬出・搬入,避難所での作業補助,安否確認,炊き出し,水くみ,介護等被災地の様々なニーズに対応した活動を行った。地震発生後13か月間に活動した一般ボランティアはおよそ140万人と推計されている(延べ人数・兵庫県調べ)。

a ボランティア活動に参加した人々

地元・被災地のボランティア団体をはじめとして,国内外のNGO,宗教団体,医師,建築士,薬剤師等の技能団体や大学,企業のボランティアグループ等をはじめとした多くの団体そして個人がボランティア活動に携わった。内訳をみると,学生や生徒が全体の約6割を占め, また,約7割が初めてボランティア活動を経験する人々であった(兵庫県が実施したアンケート調査による)。

また,ボランティア団体等は,災害発生直後から自主的に受入窓口を設置するとともに,行政や他のボランティア団体等との情報交換のため,連絡協議会等のネットワークを組織し,連絡を取り合いながら救援活動の輪を広げていった。

b  行政機関等のボランティア受入れ体制の整備等

各地から駆けつけたボランティア団体や個人に対し,被災した地方公共団体は,社会福祉協議会,民間のボランティア団体等の協力を得て,ボランティアの受入れ窓口の整備を行った。また,日本赤十字社及び社会福祉協議会のほか,NGO等の民間ボランティア団体も地震発生直後から自主的に受入れ窓口を設置した。これらの団体はまた,行政や他のボランティア団体との情報交換のため自主的に連絡協議会等を設け,被災地のニーズに対応したボランティアの派遣等の支援活動を実施した。

c ボランティアの活動内容

ボランティアの活動内容は,炊き出し,救援物資の仕分け・配送,ごみの収集・運搬,避難所での作業補助,被災者の安否確認,被災者に対する情報提供,高齢者等の災害弱者の介護や移送,保育,水くみ,入浴サービス,夜間防犯パトロール,交通整理など多岐にわたった。

また,医師等の医療救護活動,薬剤師による医薬品救援物資の仕分け,建築士による建築物の応急危険度判定,弁護士による法律相談,手話通訳・外国語通訳等による情報提供活動など,特殊技能を活かしたボランティア活動も行われた。

活動内容を時系列に従って見てみると,地震発生直後の段階では,人命救助や医療,救援物資の供給など「生命の救助・維持」のための活動に対するニーズが高く,ボランティア活動もこうしたものが中心であった。このニーズは時間の経過,状況の変化に伴って次第に変化し,ボランティア活動の内容も避難所の運営やその補助,高齢者・障害者等への支援といった「日常生活の支援」,応急仮設住宅への引っ越しや家屋の片付け等の「復旧・復興に向けた活動」へと移行し,平成7年夏頃からは,応急仮設住宅での見回りや自治会の設立等「日常生活を取り戻すための活動」が重要性を増した。

(2)ナホトカ号流出油災害

平成9年1月に発生したナホトカ号流出油災害において,日本海沿岸に重油が漂着し,関係機関,地元住民による油回収作業のほか)県内外からボランティアが駆けつけ,厳しい気候条件の中,ひしゃくや竹へら等を用いた手作業を中心とする油回収作業に従事した。災害発生後3ケ月の間に活動したボランティアの数は,のべ約27万人に上った(平成9年3月31日現在。自治省消防庁まとめ)。

関係府県や市町村においては,関係団体との連携や既存のボランティアセンターの活用も図りながら,ボランティアの受付窓口を設置し,登録,あっせん等を行った。この際,インターネット等を活用して,申込み方法,作業日程,活動場所,準備物,健康管理上の留意点等について情報提供を行う例も見られた。また, 自治体によるボランティア保険の保険料の負担もなされた。

また,阪神・淡路大震災においてボランティア活動を経験したボランティア団体が,ボランティア本部等の立ち上げ,運営等について地元の市町村や団体を支援する例も見られ,ボランティア相互の連携,ボランティアと行政との連携等において,阪神・淡路大震災の経験と教訓が活かされていたといえる。

なお,油回収作業に従事したボランティアが死亡したことを契機とし,災害時におけるボランティア活動の重要性について全国的に認識が深まっていることを踏まえ,災害時における社会奉仕活動に従事している者が不慮の死を遂げた場合,一定の条件を満たす場合には,内閣総理大臣が褒賞を行うこととし,平成9年2月4日に閣議決定したところである。

2-5 災害時のボランティア活動に関する今後の課題

阪神・淡路大震災においては,災害時におけるボランティア活動の活躍ぶりが広く認知され,ボランティア活動に対する関心が全国的な高まりをみせるとともに,多数のボランティアをまとめるコーディネーターの不足,ボランティアの登録,行政とボランティア団体との連携体制の整備等の課題が指摘された。

これらに加え,新たな課題も指摘されている。例えば,ナホトカ号流出油災害においては,厳しい条件下で作業となったことから,ボランティアの健康管理上の問題が指摘され,関係省庁から都道府県等に対し,重油回収作業に伴う健康上の注意事項についての通知がなされた。

災害時のボランティアの活動環境の整備のため,引き続き関係各方面における種々の施策を講じるとともに,新たな課題も含め検討を深めていく必要がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION