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3.3.7.2 安全性に関する事項

 

(a)火災の危険性に影響を与える一般的特性

 

水素は、その物理的要因のため取扱いの難しい燃料である。これらよく知られた要因のうちの1つは、ガスとしてその密度が非常に低いことである。空気の密度のわずか15分の1。このため、実用に供するためには、水素を圧縮するか、もしくはそれを液化させることが必要である。事業所の車両における圧縮水素ガスに関する問題は、高圧タンクの重みである。 圧縮された水素の重量は、タンクの総重量の上から7%の範囲に過ぎないと推測された。幸いにも、水素のエネルギー密度は非常に高いため、水素の1kgは、天然ガス1kgのエネルギーの約2.5倍のエネルギーを含む。したがって、同等のエンジン効率と仮定した場合、車両の圧縮された水素燃料貯蔵システムの重量は、圧縮天然ガス貯蔵システムの重量に近いものとなる。車両の圧縮水素タンクに代る支分のとしては、液化水素、水素を作るためにメタノールを供給される車載コンバータ、および金属水素化物システムによる水素の貯蔵などが含まれる。これらの技術の全ては研究の段階である。

 

水素の大量輸送のための最も一般的な方法は、水素を液化させ、それをタンクローリー、船、あるいは貨車で輸送することである。常圧で、液化水素(LH2として知られている)は、摂氏マイナス253度(華氏423度)、絶対零度のわずか約20度上で沸騰する。控え目に言っても、水素の液化、貯蔵、および輸送の過程は非常に困難である。

 

水素は、通常、液体窒素(摂氏約マイナス200度の沸騰点)を使用した複雑な多段階の過程を経て液化させられる。LH2が輸送されている時、あるいは貯蔵中における過度の内部の加熱と蒸発を回避するため、2タイプの水素分子の割合を維持するための特別な事前対策が、液化の過程で要求される。LH2は、できる限り長い時間、液体の状態を維持するための特別なしゃ熱を必要とする。

 

最も重大な火災の危険性を生み出す水素の物理的要因は、体積で4%から75%という、非常に広い爆発限界である。この範囲は、これに次いで最も広い範囲を持つメタノールの2倍である。事実上、大気への水素のあらゆる放出は、同量の他の自動車用代替燃料よりはるかに大きな量の引火性の混合気を生み出す。

 

更に重要なことは、引火性の水素‐空気混合気の爆発の可能性が非常に高いことである。水素・空気混合気のための点火エネルギーは、炭化水素‐空気混合気よりはるかに低い。静電気放電などのような、非常に低いエネルギー火花でも点火につながりうる。そして、燃えているガスが僅かに閉じ込められただけでもその結果生じる圧力上昇は、爆発につながる。

 

興味深い水素の他の物理的特性の中で、水素分子のサイズが比較的小さいために、他の自動車用代替燃料ガスより更に漏出しやすい点がある。水素ガスが無色・無臭であるため、漏出した水素は臭いや色が付けられていない限り、感知することができない。臭いや色を付けることは、水素の液化を必要とする状況においては、実行が非常に困難である。これに加えて、燃えている水素の炎は、昼光においては視認できない。従って水素タンクや配送ハイフの近くで作業をしている人々の安全性の問題に、さらに課題が加わることになる。

 

最終的に、水素は、鉄および他の金属内に拡散し、「水素ぜい性」として知られている現象を引き起こす。これは、高圧のもとでの水素ガスの貯蔵や輸送を含む状況に関する重大な問題である。適切な材質の選択および技術が、劣化を防止するために利用可能であるが、見過ごしあるいは過失により、そのような事前対策がとられない状況が発生するかもしれ

 

 

 

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