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明石海峡に近い海は水が流れるのでどんどん酸素の補給が行われ、浄化力が強く、少々有機物が入ってもそれを利用する生物系に移っていきます。ところが、湾奥部は流れが弱いため自然の浄化力が小さく、すぐ有機物が海底に溜まりヘドロ化するのです。

自然の浄化力の小さい所ほど厳しい排出基準を設けないと回復しないですし、逆に浄化力が強い所では少し栄養分を入れた方がいいのです。栄養分は肥料であり魚の餌になります。昔から「水清ければ魚住まず」と言われるように、あまりきれいな水には魚が育ちません。かといって栄養が多くヘドロ化すると赤潮を起こし、有毒な成分を持つプランクトンが増殖し悪影響が出ます。そこで海の浄化力に見合った環境づくりということが必要になってきます。以前のシンポジウムで「釣りサンデー」の小西さんが言っておられた石積護岸による浄化モデルのように、海水を浄化できる海岸になれば、海が生きてくると思います。

 

●潮の流れと明石海峡の魚との関係

明石海峡は海上交通が非常に盛んで、1日に1400〜1500隻の船が通ります、日本一通航量の多い海峡にもかかわらず、未だに漁業の場として長く使われています。それは、潮の流れや海底の地形が複雑なため、大きな網で魚を捕ることができず、それだけに取り残した生き残りも多く、漁業資源も豊富に残っているという事情があります。

また、タイ、ヒラメ、スズキは明石の三大高級魚であり、この3種類を揃えていれば寿司屋は1年中問題なく営業できます。その他に、根付きの魚もいれば回遊魚もいます。色々な種類の魚がいることが海の多様性につながっていきます。これは、播磨灘の海水の量は変わらないが、海水の配置・配分が変わることにも関係しています。

流れが速く浸食されている岩場にはタコやカサゴ、アプラメなどの磯魚が出てきますし、流れが緩くなり砂に変わっていくに応じてカレイ、砂が絡むとイカナゴ、ベラなど、泥が絡んでくるとイイダコやアナゴなどが出てきます。また、一番深い所はタコの巣で、流れは非常に強いが、潮止まりになった時に岩穴から出てきて餌を食べます。明石ダコのおいしさは食べている観によるのです。エビやカニ、貝類、浅瀬に上がるとベラやアイナメなどの魚をどん欲に食べます。湾奥部の赤潮やヘドロの原因になる有機物の一部が、明石海峡に運ばれてマリンスノー(綿ぼこりのような形)になり、海底に降り積もります。しかし、酸素が十分にあるのでそれをエビやカニが食べ、それを求めてタコが住み着くのです。こうした食物連鎖により海底にヘドロが貯まらずきれいな環境になっています。

 

●明石ダイはなぜおいしいか

明石ダイはいろんな割を食べています。5月の連休明け頃、明石海峡に回遊し10cm位に成長したイカナゴを食べて脂がのってきます。5月の終わりから6月にかけての産卵期には群でやって来ますが、卵の方にエネルギーがいくため身の味は少し落ち、産卵直後はもっとやせているので夏場のタイは食べるなと言われるのです。しかし、タコを食べて回復します。タコは5月の終わりから8月まで2週間で体重が倍、2ヶ月もすると10倍以上になります。成長の早い時期のタコは非常に味がありますし、他にエビや力ニも食べるので、そういう明石海峡の味がミックスされるため、明石ダイは非常においしい素材になっているのです。

 

●明石の魚のおいしさの秘訣-活魚と鮮魚の違い-

素材として違いはないのに、なぜ食べ比べたら味が違うのか。それは魚の扱い方の技術によるのです。

・鮮魚と活魚の違い

関西の場合、魚はほとんど「締める」ということをします。締めた段階は脳死状態で、臓器=身は生きています。硬直状態になると細胞が死んだことになります。硬直が起こる前が活魚、起こった後が鮮魚です。鮮魚時代は魚を捕ってすぐ氷詰めにするので、いきなり硬直します。細胞が死んでいるので腐敗が始まり、時間が経つほど臭みが増して味が落ちます。柔らかくなった魚はダメだ

 

 

 

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