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フィールドワークフェローシップに参加した感想

 

高比良 知也(九州大学5年)

昨夏に南米を旅行した際にある日の首都の病院を見学する機会があり、その病院にある医療機器は日本のものにくらべるとやや古いものが多いものの、その内部での光は私が普段大学病院で見ているものとほとんど変わらなかった。しかし首都を離れジャングルの奥地に人ったインディアンの集落では当然医者はいるわけもなく、病院に行こうにもその村まで道路はないという状況であった。このような2つの光景を目の当りにしてどのようにしたらこの余りにも格差がありすぎる2つの状況を近づけることが出来るのだろうという疑問が沸き上がってきた。そこで実際にそのような活動に携わっている人々の話を聞くことが出来たら回答が得られるのではないかと思いこのフィールドワークに参加したわけである。

今回のフェローシップではフィリピンを訪れ、さまざまな保健医療施設を見学した。あらゆる施設で強調していたことの一つはファミリープランニングである。フィリピンも南米諸国と同じくカトリックの国であるから基本的には人工的にファミリープランニングを行うことは禁止されている。しかし、地域の保健施設では住民にその必要性を地道に解いており、その成果もまずまず上がっているようである。保健や医療という問題はこのように時として宗教・思想・習慣といつたものに踏み入れなければならない。それだけにある一つの方法ですべての国・地域をカバーすることは不可能であり、状況に応じた方法を用いねばならない。そのためには、その国・地域を知るということが前提条件となる。このことは国際医療協力を考える上でも不可欠なことだろう。

国際医療協力という言葉はよく新聞などに載っているが具体的にはどのようなことなのかピンとこない言葉である。今回のフェローシップに参加するまでは辺境の地で地域医療の最前線で活躍する医師の姿をぼんやりとイメージしていたが、実際にはもっとマクロなものであり、具体的には感染症防止のためのワクチンや治療薬の提供や医療施設の建築などが主であるようである。現在日本は国際協力に対する支出金は世界でもトップクラスである。しかし、発展途上国に最先端医療施設を建築してもそれが活用されないようなケースが結構あるという話を聞いた。今後は日本も経済状況が苦しくなり、資金面での協力の伸びは期待できないであろう。それだけに、相手の国に何が求められているのかをよく考え、資金面だけではなく、技術面も含めた国際協力の質の向上が必要であると感じた。

フィリピンの町中ではストリートチルドレンの姿を多く見かけた。彼らは外国人を中心にお金をねだる。生活が苦しくてそのようなことをするのだろう。が、中には働くよりも高収入を得ている者もいるらしい。確かにお金を乞う彼らの姿はかわいそうであるが、お金をやることが彼ら自身の自立を妨げることになるのも事実であろう。彼らの姿を見ていてふと国際協力にも似た様なことが言えるのではないかと思った。すなわち国際協力の名のもとにただ相手の国が求めてきた資金を提供するばかりではその国の将来にとってはマイナスになりかねないのではないかと思った。国際協力というものはその国が自立できる方向にもっていくものでなければならない。WHOで援助と協力の意味の違いを強調していたのもこのようなことが言いたかったのだろう。

今回のフェローシップではフィリピンの地域医療ならびに、国際医療協力の現場を見ることが出来、また一緒に同行した仲間や国際医療に携わる人々との会話によって、今後自分がどのような形で国際医療に関わっていけば良いかある程度の方向づけは出来たように思われる。この経験をステップにして広い視野をもって再び医療と言うものを考えていきたいと思う。

 

 

 

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