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?. 血清疫学調

 

1)予備(1997年6月)調査

6月24日、自動車でクラチエからメコン川上流約30kmにあるSamboを訪問し、Health Centerの入院および外来患者計6名と、小学校児童20名から静脈採血を行った。翌6月25日、小型モーターボートでクラチエから下流約30kmのPong Roに行き、小学校児童38名から採血した。採取した血液はProvincial Health Officeの検査室で遠心沈殿して血清を分離し、獨協医科大学へ持ち帰り、日本住血吸虫症の卵抽出抗原を用いた酵素抗体法(ELISA)によってメコン住血吸虫症の抗体検査を実施した。

 

Sambo Health Centre:

本症の流行地であるSambo Health Centreの患者6名中2名は肝脾の腫大、貧血、黄疸、腹水の貯留がみられ、るいそうが顕著であった。ELISA抗体値(陽性限界ODQ.2以上)も低く、IgG抗体は6名中2名が陽性と判定された。IgM抗体はすべて陰性であった。

年齢、性別、ELISA値、治療の有無と時期は表1に、またIgGおよびIgM抗体値 の分布は図1に示した。

 

Sambo小学校:

無作為に抽出した学童20名から採血した。血清のELISA値はIgG抗体が高く、最高1.155のOD値を示し、20名中14名(70%)が抗体陽性であった。また、1名(No.18はIgM抗体陽性でOD値は0.757と高値を示し、急性期の患者であることが強く示唆された。この地域の住民は3ヶ月前にプラジカンテルによる集団駆虫を受けており、高いIgM抗体を示す患者がみられたことは駆虫後に再感染があったものと解釈され、この地域にはいぜんとして住血吸虫症の活発な流行と伝搬が残っていると考えてよい。

 

Pong Ro小学校:

Pong Roには回教徒が多いのが特徴的であった。この村落ではこれまで住血吸虫症の集団駆虫は行われていない。学童38名中、1名の擬陽性者がみられたが、他はすべて抗体陰性を示し、クラチエから約30km下流のこの地にはすでに住血吸虫症の流行と伝搬がみられないものと考えられた。17名(47.4%)に肝腫または脾腫が認められたが、これらは住血吸虫症以外の他の疾患に起因するのではないかと思われた。

 

2) 1998年2月の調査

2月3日から15日まで13日間にわたってクラチエ省に滞在し、北はクラチエの上流約40kmのKoh-Rongiev島のKampong Krabeiから南はクラチエの下流約30kmのHanchey Leuまで6地点の小学校を歴訪し、学童計353名から採血した。これにはプノンペンからわれわれに

 

 

 

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