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?. カンボジアの住血吸虫症対策実施の可能性に関する予備調査

 

前述のCNMの所長Dr.Abudulcoyaumeは1996年7月12日付けのWHO/WPROへの公式書信で「われわれはWHOから支給されたプラジカンテル6万錠を持っているが、運用作業費がなくて困っている。モーターボート2台、オートバイ2合、ボート間無線連絡機、検便用機材、薬品、デスクコンピューター、ガソリン代、作業日当など概算5万米ドルが欲しいので援助方お願いする」と書いている。WHO/WPROの寄生虫病担当官Dr.Selfは安羅岡に対し□頭で数回にわたってカンボジアの住血吸虫対策への協力を要望していた。

このような状況下で、この国の住血吸虫症対策援助計画の実行可能性について調査するため、安羅岡一男と松田肇が1997年6月17日-7月1日の2週間カンボジアに派遣された。あらかじめ安羅岡と保健省次官のDr.Mam Bunhengと書信を交換し、われわれの訪問と調査について保健大臣から公式の招待状(1997年4月22日)を受領した。

 

〈調査概要〉

6月18日にバンコク経由でプノンペンに入り、前夜市内で第一首相軍と第二首相軍との間で銃撃戦があったことを知った。市内の道路上数カ所に武装兵士が対峙しており、緊張感が漲っていた。翌19日、保健省で次官のDr. Mam Bunhengに会い、彼から「わが国の住血吸虫症は公衆衛生上きわめて重要であり、その対策に是非財団の協力をお願いしたい」旨の強い要請を受けた。マラリアセンター(CNM)で所長のDr.Abdulcoyamne、副所長で全国住血吸虫症コントロール計画のマネジャーを兼ねるDr. Socheat、およびマラリア学者のDr. Denisと会談し、住血吸虫症の現状と対策について説明を受けた。CNMには86名のスタッフがいるという。その後市内は日を追ってしだいに平静化した。

6月23日午前7時、定員50名くらいの小型快速船でプノンペンを離れメコン川を遡上し、カンポンチャムを経て6時間後、午後1時に終着のクラチエに到着した。船着き場に近いHotel Heng Hengに投宿することとした。省庁舎に表敬訪問し、第三副知事のMr.Danh Angと会談した後、省衛生局次長Dr.C.S.Lyに会い、検査室を参観した。翌24日は自動車で北へ30kmのSambo病院を訪問し、重症患者6名を診察し、採血した。さらに付近の小学校でプラジカンテル治療済みで肝脾を触れる学童20名からも採血した。翌25日はモーターボートでメコン川を下り、Pong Roの小学校で肝脾腫がみられる末治療の学童38名から採血し、午後、省衛生局検査室で血清分離した。これらの血清は現在獨協医大で免疫診断的解析を行った。翌27日午前6時55分、クラチエを立ち、往路と同じ船でメコン川を下って正午過ぎプノンペンに帰着した。翌28日、保健省で次官のDr.Mam Bunhengに帰国挨拶し、またCNMに表敬訪問した。

 

 

 

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