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「ナショナル・トラスト運動と『まちづくり』」

 

田村 明   法政大学名誉教授 地域政策プランナー

司会 田村明先生をご紹介申し上げます。田村明先生は法政大学の名誉教授、地域政策プランナー、現在、地域政策プランナーというふうにおっしゃっておりますが、先生ご自身のご経歴をお伺いすると、さすがにそうだという納得いく非常に多彩な、しかし、非常に楽しいお話が伺えるのではないかと思います。

ナショナル・トラスト協会の理事としても大変なご支援をいただいておりまして、私ども、田村先生が私たちの頭だと、ブレインだというふうにお慕い申し上げているところでございます。

それでは田村先生、「ナショナル・トラスト運動と『まちづくり』」というテーマでご講演をお願いいたします。(拍手)

 

田村 きょうは「ナショナル・トラスト運動と『まちづくり」」という題をいただきました。全体としてのテーマは21世紀の環境ということです。私はかなり早く、この環境という問題に取り組んだ人間の一人としてまず環境について申し上げておきたいんですね。私は、初めに建築学科を出ましてから、もう一遍法学部の法律と、それから政治と、大学の卒業免状を3回頂きました。最初のときには丹下建二先生が私の卒業論文の指導教官で、有名な、皆さん方ご承知のとおり、東京都庁舎を設計したり、世界的な建築家なんです。私は、もうちょっと広いことをやりたいと思うんで、理科系だけでなく同時に文科系のこともやったわけです。

でも何をやったらいいかその頃はよく分からなくて、それで中央の各省庁をいろんなところを経巡りました。全部名前は言いませんけれど、環境庁なんていうものはもちろん影も形もない時代でございますが。でも中央の官庁というのはどうも縦割り主義であまりうまくできてない。さっき有馬先生のお話もありましたとおりに、私は身をもってそれを体験しておりますし、いくら理屈で頭で分かっていても、役人を続けている以上、そうなってしまうんですね。私、せっかく理科系と文科系をやって、もう少し広く問題を考えたいと思うのに、役所にいたら、どうしても縦割り思考、思考じゃなくて行動になってしまうんです。頭は分かっているんです。お役人の人たちは別に頭が悪いわけでもなくて。ただし、自分たちの行動としてはどうしても縦割りにしなきゃいけないことになってしまう。そういうのは私、嫌なもんで、幾つかの省庁、毎年、試験を受けちゃあ入って、やめて、毎年、試験を受けて、またやめてということを4回も5回も繰り返しました。

そうして今度は、民間の会社に入ったんですね。民間の会社では不動産のことをやっておりました。不動産の投資の問題。子会社をこしらえたり、開発業務をしておりました。不動産屋ですね。そういうことをやっていたんですが、私としてはどうしても一生の仕事というのを発見したい。初めの中央官庁ではずっといたら、このまま楽して上に上げてくれるのにと言われました。民間の会社は中央官庁とは違いますけど、そのなりにいたら、それなりに偉くしてくれて、子会社の社長ぐらいにしてくれるんでしょう。でも、どうもそういうのはおもしろくない。自分の仕事って何かないかな、ずうっと探しておりました。

 

 

 

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