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ィスなどの格差拡大が予想される。既に、ゴミの収集など一部サーヴィスの有料化を実施している地方自治体も現れている。また、地方自治体間の財政力の格差は、職員の給与にも現れているようである。その為に、貧しい地方自治体から裕福な地方自治体への人材の移動もみられているという(内務省におけるヒアリング調査による)。

第三に、中央政府からの補助の問題がある。地方自治体間の格差は、本来、当然に生まれるものであるが、それが住民に対するサーヴィスに影響するならば、格差の一定程度の是正が必要であり、それはまず第一義的に中央政府に委ねられることが考えられる。しかし、現在の中央政府からの補助制度では、格差の是正は必ずしも容易ではない。何故ならば、裕福な地方自治体に多く割り当てられる中央政府からの譲渡税と、住民・施設の多少によって決定される標準的補助金の関係が、有効に機能しないからである。現在の補助制度では、個人所得税などの税収が多くかつ各種施設を多く持っている地方自治体に有利に働く。むしろ、裕福な地方自治体が多くの補助金を中央政府から獲得するという、補助制度による格差拡大の可能性がかなり高いのである。

第四に、こうした現状を、ハンガリーの中央政府も看過している訳ではない。現在、内務省は、地方自治法改正に着手している。改正の基本方針は、地方自治体の権限および業務の拡大による分権化の推進である。分権化と財政基盤の強化を厳しい経済環境下で行うというかなり困難な課題を、内務省は、小規模な地方自治体の合併や吸収の促進によって解決しようと考えているようである。

最後に、地方自治体間または中央政府と地方自治体の対立の解決方法の問題がある。現在、こうした対立が当事者の間で解決できない場合は、普通裁判所の手に委ねられている。確かに、裁判所による対立の解決は、その過程の平等性や透明性などから、国民の理解を得ることが容易である。しかし、裁判所が下すのは法的判断であり、そこから抜け落ちる要因をどのように斟酌していくかという問題が残るであろう。

ハンガリーの地方自治制度に関して、担当者に対するヒアリング調査および資料の分析から総じて感じられたことは、民主主義に対する絶対的な信頼である。1989年の激動を通じて、ハンガリー国民は、自身の手で民主主義を勝ち取ったと考えている。しかし、民主主義に伴うさまざまな問題が、日本を含めた先進国で既に明らかになっていることは言うまでもない。今後、近い将来に予想されるEU加盟とも相まって、ハンガリーは、勝ち取った民主主義に関する決算を行っていかなくてはならないのである。

(月村 太郎/神戸大学教授)

 

 

 

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