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この結合組織の設立によって、首都地方自治体は、より有効な業務の運営ができることになる。しかし、他方で、首都と結合組織を設立した地方自治体にとっても、遥かに財政規模が大きい首都地方自治体を共同で業務を行うことによって、効率的運営、負担軽減などの利益があるであろう。

 

(6) 中央と地方との関係における財産分割

 

地方自治法第107条においては、国有財産の地方自治体への譲渡が規定されている。同条(1)によれば、それは、地方自治体の行政領域にありかつ法律によって指定された不動産・森林・水域、評議会によって設立・運営されかつ公益事業に益する経済組織、基礎自治体内にありかつ住民の必要性に資する各種施設、評議会などが運営する教育・文化・医療・社会・スポーツその他の機構の財産、評議会などが運営する国営集合住宅、中央の国家的業務に関連しない公共建造物およびそれに付随する土地、評議会の資金・債券などの財産的権利である。また、同条(2)では、評議会などが運営する国有不動産、森林、水域、資金、債券は、地方自治法施行の日から地方自治体に譲渡される。

これを受けて、第68条(1)では、第107条(2)によって譲渡されるうちで、基本的公共サーヴィスを提供する機構に属する財産は、原則として特別区に譲渡されると規定している。また、首都に譲渡されかつ非基本的公共サーヴィスを提供する機構に属する財産が、特別区に譲渡される場合もある(第68条(2))。

さて、特別区に譲渡された売却される場合は、競売が主である。その場合には、首都地方自治体の先買権が設けられている。すなわち、首都地方自治体が、競売における最高価格で買い取る意思を明らかにした場合は、それが優先するというものである(ブダペシュト市第二区役所におけるヒアリング調査による)。

 

6 今後の展望と問題点

 

今後の展望および問題点は、以下の5点にまとめることができる。第一は、地方自治体における財政の問題である。前述したように、ハンガリーの地方自治体では、譲渡された財産の売却によって急場を凌いでいるというのが現状である。いわば「タケノコ生活」である。こうした財政を続けている限り、いずれ売却可能な財産を全て売却した状態が到来するであろう。中央政府による補助についても、次に述べるような問題があり、地方自治体の財政の安定化には、「地力」の強化が必要であるが、ハンガリー地方自治の現状を概観する限り、多くの地方自治体における将来の姿は悲観的にならざるを得ない。

したがって、第二に、全般的に厳しい財政状況の下で、地方自治体間ではサーヴ

 

 

 

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