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的伸びに伴う個人所得税の増加であろう。ハンガリーは、1994年からの全般的緊縮財政によって経済危機をほぼ乗り切り、今後は、かなり高率の経済成長が予想されている。しかし、個人所得税における地方自治体への譲渡の割合は今後、低下することが予測される。これらを補うために、今後最も予想される歳入源は、借入、とくに起債による資金の調達である。しかしながら、これについても当然に償還の問題が存在し、借入に一元的に依存することは困難である。ただし、借入によって暫時息継ぎができることは、他の地方自治体に比較して、まだしも楽観的な現状であるとも言えよう。

 

(5) 都と区の関係

 

これまで述べてきた業務・権限からまず看取されることは、首都地方自治体の業務の非常な広範性である。さらに、第67条(1)は、中央政府が政令を通じて、本来基礎自治体に委任するべき国家行政上の一定の事項に関する業務・権限を、特別区の代わりに首都地方自治体に対して委任することを規定しているのである。しかし、他方で、第63条(4)は、都議会に対して、その業務・権限を特別区に、その財政的裏付けと共に委任できることを定めている。

このように、地方自治法の首都に関する規定(第7章)においては、首都における地方制度の二層構造を配慮し、首都と特別区との密接な関係に関して、随所において規定が為されている。その例として、上記の業務・権限に関係の他に、たとえば、区議会の委任を受けた区代表は、投票権を持たないとはいえ発言権をもって都議会に出席できる(第62条(4))という点がまず挙げられるであろう。

また、首都と特別区は、首都の都市計画策定において密接な協力が必要である。第63条/C(1)では、首都の総合都市計画の策定に関して、都議会が、中央政府および区議会と協議した上で定めるとする。中央政府は、都議会による首都総合計画において定められた、限定的なプロジェクトについて、首都公共行政局長が関与するにとどまる。他方、区議会の役割は、首都総合都市計画の枠内において、各区に関する詳細な計画を策定することである(同条/C(2))。

また、首都は、ハンガリー地方制度において県と同じレヴェルに置かれるが、領域の点からは、県よりも小さい。業務の実際上の広域的処理には、首都地方自治体だけでは困難な場合が生ずる可能性がある。そこで、第63条/Bでは、首都の域外の地方自治体と、首都圏の結合組織を設立することをとくに定めている。結合組織を設立すべき業務としては、とくに、首都圏に関する計画、公共輸送、治水、上下水道整備、自然災害予防、環境保全、エネルギー供給、生活基盤整備、教育・医療・社会福祉施設が列挙されている。

 

 

 

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