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極端に少なく(後者については千部)、手に入り易い資料ではない。クライ法には税制、許認可など市民生活に密着したものも多いのだから、それを広範に普及する努力がなされていないことは問題である。

主な新聞としては、通常の商業紙として『ロシアの朝(Utro Rossii)』、『ウラジオストク(Vladivostok)』、『赤旗(Krasnoe znamia)』があげられる。『ロシアの朝』は、沿海地方ソビエトの機関紙として1990年9月に創刊され、1998年のソビエト廃止後、商業紙となったものである。発行部数は約1万6千部である(14)。『ウラジオストク』は、ソ連共産党ウラジオストク市委員会およびウラジオストク市ソビエト共有の機関紙であった『夕刊ウラジオストク』がソ連共産党の廃止後に衣替えしたもので、発行部数約8万郡である。『赤旗』は、ソ連共産党クライ委員会とクライ・ソビエトの機関紙であったものが、同じく8月クーデター後、商業紙となったものである。こんにち、以上3紙のいずれも、かつて共産党やノビエトの機関紙であったという印象は全く与えない。ナズドラチェンコ知事に対しても、チェレプコーフ市長に対しても、是々非々の立場をとっている。

党派の機関紙に該当するものとしては、ナズドラチェンコ系の『ノーブォスチ(Novosti)』とチェレプコーフ市長派の『沿海(Primor'e)』があげられる。『ノーヴォスチ』は、ナズドラチェンコ体制が生まれた1993年に創刊され、当初は通常の政治社会新聞をめざしたが、おそらく購読数が伸びなかったのだろう、間もなく売春の広告が一面つぶして載るような低級新聞に生まれ変わった。それが効を奏したか、こんにちでは大変人気があり、1998年の契約数7万郡と、『ウラジオストク』に迫る勢いである。調査する側としては、売春の広告の隣に重要な法案が載っていたりするのでギョッとさせられる(15)。『沿海』は、1997年2月以降発行されるようになった新聞であり、発行部数は約10万部と言われ、これだけをとれば沿海地方最大であるが、ほとんど無料で配布されていることから、市庁の公金から援助を受けているのではないかという疑惑が持たれている。このほか、ロシア共産党クライ委員会の機関紙としての『人民権力(Narodvlastie)』があげられるが、おそらく発行部数は微々たるものだろう。

以上が印刷資料であるが、これらを渉猟すべき場であるクライ図書館は破局的な状況にある。人員削減のため書庫労働者は解雇され、司書自身が書庫に入って本,雑誌を持ってくる。したがって本の注文カウンターの前には長蛇の列ができる。利用者自身が司書と共に書庫に入って運搬を手伝わなければならない場合も多く、当然の結果ながら、本・雑誌の保管場所は乱れ、検索カードは散逸した状態である。検索はもとより利用者登録でさえコンピューター化されていないが、これは近年のロシアのリージョン規模の図書館としては希な事態である。後述の

 

 

 

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