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憲法裁判所により、違憲であると認められた法令またはその個々の規定は、効力を失い、またロシア連邦憲法に適合しないロシア連邦の条約は無効とされることになる。

ロシア連邦憲法裁判所に提訴しうるのは、ロシア連邦大統領、連邦会議、国家会議、連邦会議または国家会議の各5分の1の議員、ロシア連邦政府、ロシア連邦最高裁判所およびロシア連邦最高仲裁裁判所、ロシア連邦の構成主体の立法機関および執行機関であるが、市民もまたその憲法上の権利および自由の侵害に対する不服申し立てを行ない、裁判所は具体的事件に適用される法律の合憲性の審査を要求することができる。直接に市民が憲法裁判所に提訴しうる点は、市民の権利・自由の保障にとって重要であるが、ここでは直接の課題ではないので、その意義の確認にとどめておきたい。また、憲法裁判所は、ロシア連邦大統領、連邦会議、国家会議、ロシア連邦政府、連邦構成主体の立法機関の要求がある場合に、ロシア連邦憲法の解釈を行なう。

93年憲法にもとづく新しい憲法裁判所法は94年7月に制定されたが、定員増にともなう新しい裁判官の補充がなったのは翌95年2月になってからで、その後この第2次ともいうべき憲法裁判所の活動が開始された。現在憲法裁判所は、連邦会議によって新たに補充された裁判官を含む19人の裁判官によって構成され、活発な活動を行なっている。なお、連邦構成主体には、共和国憲法裁判所や州憲章裁判所を置くところがある。96年12月の「裁判制度に関する法律」は、その可能性を改めて確認している。

ただし、91年法には存在した憲法裁判所自体が職権によって「意見」を提示するという権限は、憲法裁判所自体の「政治化」への防止策として、これを認めなかったことについては、留意しておく必要がある。他の諸国でも、これを認めるかどうかは、市民による訴願を認めるかどうかといった問題とともに、中心的な論点のひとつであったからである。憲法裁判所の紹介は、以上にとどめて、早速それがロシアの地方制度と地方自治の確立にどのようなかかわり方をしているのかをみることにしよう。

 

(2) 地方制度・地方自治の確立と憲法裁判所の役割

 

ア 前史(93年憲法制定まで)

 

最初にふれたように、ロシアの憲法裁判所は91年に創設され、93年憲法制定以前においても積極的な活動を行なっている。その中には、当然に、地方制度、地方自治にかかわる判決も含まれている。主なものを以下に列挙しておこう。

? タタルスタン共和国の主権宣言およびレファレンダム実施に関する一連の法

 

 

 

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