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2 企業における自己編成について

 

(1) 組織の目的

組織の目的は、イギリスの産業革命時にアダム・スミスが指摘して以来、分業・分担による効率性向上であるとされてきた。

しかし、最近では、そもそも何を分担・分業するのかが問われるようになり、多様な人々が関係性を持つことにより、分担・分業以前に知の再編成を行うこと、あるいは、新しい知の創発をすることが目的であると捉えられるようになった。

チームワークによる分業・分担から、コラボレーション(協働)による創発へと、組織の目的は変化しつつある。

(2) 組織と環境

組織のあり方に関する理論の流れをたどると、まず、60年代末までは、「The Bestな組織」というものが存在すると考えられ、それが追い求められていた。

これに対し、その後70年代に一世を風靡した「コンティンジェンシー理論」という組織論は、実証研究に基づき、環境ごとに異なる適切な組織形態があると主張した。すなわち、組織が存続するためには、環境の動きに適応しなければならないため、環境の変化とは関係のない絶対的な組織は存在しないという考えである。コンティンジェンシー理論の核は「環境適応」の概念である。

しかし、これも80年代半ばに廃れる。それは、組織の目的を環境適応による存続のみに求めることには無理があったためである。

さらにその後、「環境創造」という考えも現れた。環境と自己とはインタラクティブな関係にあり、したがって、組織が環境を創造することもあるという考えである。いずれにせよ、組織は環境に対して、一方的に「受け身」なわけではない、ということが言われている。

もちろん、環境適応理論が全く誤っているわけではなく、これが当てはまる組織も少なくない。アシュビーの「最小多様度の法則」は、環境の中で個体が生き抜くためには、環境の多様度と同様の多様度を個体の中に持たなければならないとする

 

 

 

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