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ボランティア、企業などによる多彩な供給があってよい。むしろ、これらを適切に組み合わせる仕組みさえあれば、多彩さはより豊かで効率的なケアの源泉になりうる。その意味では、規模の大きい自治体の方がよほど柔軟な地域福祉システムを構築することが可能なはずである。しかし現在のところ、保健・医療・福祉をうまく統合することに成功しつつある自治体は相対的に小規模な自治体に限られている。大規模な自治体はまだその潜在的可能性を活用できていない。では、何がその活用を妨げているのか。結論を先取りすれば、自己編成能力にとって最も肝腎なことは創造的合意形成の能力なのである。このことを明らかにするために、逆に、小規模自治体の方をよく検討してみよう。小規模自治体がこぞって成功しつつあるわけではない。むしろ、うまくいかない場合の方がずっと多い。

では、何が成否を分けるのか。そこで浮上してくるのがコミュニケーションと協働(コラボレーション)の問題である。成功者たちは、こぞって、異なった職種間や異なった部局間のコミュニケーションの重要性を強調する。組織・業務の再編成をともなう改革は、体制の組み替えである。このような改編はさまざまな既存の諸関係の変更を必要とする。そのため、さまざまな軋轢や対立が発生する。なかでもやっかいなのは、利害対立の克服と、それぞれの関係者が慣れ親しんできた慣習化された行動様式とその行動様式を支えている常套的な固定観念や思考様式の再編にともなう軋轢の克服である。これらを克服する王道は、人々が進んで受諾できるような魅力ある改革案を創出することである。利害対立の克服は、改革案が前よりも大きな価値を生み出すものであれば、原理的に可能である。増大した価値を分け合う工夫ができれば、皆が前よりもなにがしか分け前を増やすことができるからである。むしろ、やっかいなのは後者の軋轢の克服である。この軋轢は改革案の策定段階から障害となりかねない。まず、魅力あるアイディアを生み出すことが容易でない。互いの言葉を互いの想像力に響かせ合うプロセスから思いつきが創発する。しかし、思いつきを実行可能な確かなアイディアや政策案にまで練り上げることも容易でない。既存の専門知識や経験知識を寄せ集めただけでは整合性のとれた案にまとまらない。それぞれの専門知識や経験知識を出し合いながら魅力ある案をまとめ上げなければならない。しかも、この作業にはたいていブレークスルーを要する難所がいくつかあるものである。こうした困難を克服するのも、多くの場合、やは

 

 

 

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