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力は経験・学習によって変化したり発展したりする。実際、やりがいのある新規事業の遂行から充実した達成感を経験して、ますます意欲を高め、企画・立案力や実行力を伸ばす行政マンは少なくない。現在のパーフォーマンスだけから即断するのはまちがいである。むしろ、現行制度がそのような経験を積む機会を制限していることに問題がある。職員一人一人の自己編成能力は、働きがいのある職場でやりがいのある仕事の達成経験を積むことによって、培われ発展するものである。要は、行政をやりがいのある仕事に再編成し、それを成し遂げる経験を積むように制度や仕組を改革することである。また、それによって、意識改革を促し、能力を発展させることである。

さて、人的資源を組織化して行政を再編する自治体自身の自己編成力は、人材個々の能力だけでなく、その量にもある程度依存している。ルーティン化された業務をこなすのに精一杯で、企画・立案に人員を割くことができない小規模な自治体では行政の再編もやりようがない。実際、厚生省のゴールドプランに対応する市町村の老人保健福祉計画の策定では、民間のシンクタンクまかせだった団体が半数以上あったといわれている。担当者が日常の民生業務に追われ、計画策定のマニュアルを読む余裕もないケースが多数あったそうである。企画・立案に人員を割いたり、人員再配置をともなう機構改革を実行するには、やり繰り可能なある程度の職員数が必要であろう。したがって、それなりの自治体規模を必要とする。しかし、それがどれくらいの規模かについては、確定的な解があるとは思われない。確かに、あまりに小規模では、個々の職員の業務改善はできても、機構改革は難しい。そうかといって、大きければよいというものでもない。硬直化した巨大ピラミッド組織の改革は一層困難でさえある。自己編成力にとって決定的に重要な別の要因がある。次の事例はそれを示唆している。

今後、高齢者介護に備えて保健・医療・福祉の統合が不可欠である。現在この統合に成功しつつある自治体に共通する特徴は、比較的小規模な団体であることである。そして、意欲・見識・指導力に優れた公立病院の院長とそれを強力にバックアップする首長がいて、病院を核とした地域ケア・センターを構築していることも共通している。しかし、これを一般化して、小規模自治体の方が自己編成力が高いと即断するのは短絡である。再編のヴァライエティは大規模自治体の方がずっと大きい。例えば、ケア・サービスの供給が公的供給に限定される必要はないし、それが理想的だというわけでもない。公的組織、

 

 

 

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