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の理念による財源調整方式はナショナル・ミニマムの推進には適している。しかし、基礎自治体の自己編成力によって《地域社会づくり》を進める制度としてはふさわしくない。この方式では、何よりもまず自治体の創意・工夫・努力を制約するし、折衝によって補助金や交付税をより多く獲得することができるため、そうすることが自治体の手腕だということになり、いわゆる中央直結政治への志向を醸成する。

基礎自治体の自己編成力による《地域社会づくり》を推進するには、地方交付税の理念を、自己編成力を確保する「財政力保障の理念」に転換しなければならない。この転換によって、自治体は個々の事業内容を拘束されなくなる。どのような事業をどのように実施するかは自治体が自らの責任で自ら工夫しなければならない事項になる。それでも上位政府が財政力を保障する論拠は、基礎自治体に一定の自己編成資源を保障して、《地域社会づくり》を付託するためである。財政力保障を理念とする調整方式では、配布額を事業実績とリンクさせるべきではない。人口や面積などにリンクすべきである。配付額が中央との交渉事項でなくなったとき、「中央直結の政治」から「自己編成の政治」への転換が生じる。また、自治体間では、財源分捕り合戦ではない、より有効な財政力行使の競争が生まれる。新しい財源調整制度では、自治体は、補助事業の実施や起債も含めて、すべての政策決定を自らの(調整財源を加えた)財政力と経営手腕に照らして判断することになる。

 

3 人的資源と協働コミュニケーションによる自己再編成

自己編成力は物的資源とそれを有効に利用する個人及び集団の能力とからなる。そこで、以下では、《自己編成力》を資源と能力の複合概念にあて《自己編成能力》を人的能力にあてる。自治体の視点からみれば人材は資源である。その人的資源については質(能力)と量が問われる。自治体の首長、管理職、一般職員などの資質についてはいろいろ取り沙汰されている。しかし、一般的資質という点で、これらの人々が劣っているという論拠はない。むしろ、就職志望動向からみて、職員の資質は地域社会の平均を超えていると判断すべきであろう。問題は自己編成力からみた資質である。確かに、これまでは、標準化・基準化・定型化された業務をまちがいなく実行することが強く求められてきた。そのため、変化を回避する性向があるかもしれない。しかし、人間の性向や能

 

 

 

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