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現象などにより海面の後方散乱断面積が著しく変化するため、その補正のための補助手段が必要である。

(2)沿岸海域

 地球上の沿岸海域の面積は、河口域も含め、地球表面積の10%を占め、そのバイオマスの生産量は全地球のバイオマス生産量の25%にも達すると言われており、海運なども含め、人間の生活に極めて重要な海域である。しかし、風や波による海底と海表面のミキシング作用、季節、海底地形、氷など、沿岸海域環境に影響を与える要素は、複雑多岐であり、その各種パラメータの計測あるいはモデル化は、外洋の場合と比較して、極めて難しいと考えられている。実用的には、「海流」と「海面温度」の情報が最も有用であると言われており、「アロングトラック・インターフェロメトリック・SAR」による流速の計測が期待されている。

(1)海底地形水深50m程度までの海域においては、潮汐による流れとそれに付随した波によって海表面に海底地形を写した「海面粗さ」(さざ波)が発生することがある。このさざ波は後方散乱断面積に関係しており、SAR画像上に、海底地形を写した濃淡画像として現れる。

(2)湧昇と大気/海面相互作用湧昇域は、豊富な栄養塩類を含んだ冷水が海中から海表面に湧出しているところであり、よい漁場であることが知られている。
 湧昇域は、周りの海面と比較して、さざ波の小さい滑らかな面をしており、従って、後方散乱断面積が小さくなっている。海面が滑らかになるのは、海中物質による界面活性作用と、大気と海面の温度差が小さくなって蒸発が抑えられ、大気/海面相互作用が安定状態にあるためと考えられている。
 このような滑らかな面に対しては、VV偏波の場合もHH偏波の場合も、似たようなSAR画像が得られるが、強い蒸発のあるような海面に対しては、明らかに、二つの偏波について、異なる画像になる。この違いを利用して湧昇域の識別性を上げることができる。

(3)内部波内部波は、海底と潮汐との相互作用により引き起こされるソリトン(孤立波)であり、準周期的な振動現象を伴う。孤立波については数学的な取り扱いが可能である。内部波は、海岸近くでは、海底の沈殿物を海面まで巻き上げ、バイオマスの生産能力を飛躍的に高める。
 SAR画像には、内部波は準周期的な筋として、明瞭に観測される。また、光学的には、

 

 

 

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