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4.4 SARによる海域情報解析について

 SEASATのSARが打ち上がってから、約20年が経過したが、この問にSARについて種々のことが分かってきた。ただし、分かったことは極一部であり、分かっていないことの方がはるかに多く、SARの実用という点に達するにはまだ長い道のりがあるという状況である。米国においても、SAR研究に、これからも力を入れていこうというところである。日本においても、時を同じくして、このようなSAR研究が行われることになったわけであり、この成果を、SARの実用化に向けて一歩でも近づくように、活用していかなければならない。ここでは、現在、SARで海面を観測してどのようなことが分かるか概観し、それを踏まえて、この研究の課題、方向について考えてみる。まず、SARが具体的にどのような分野で、どのようなパラメータを計測することができるか、
 ・外洋における利用
 ・沿岸海域における利用
 ・その他
に分類して、概観してみる。

(1)外洋における利用

(1)表面波外洋における表面波は、これまでSARで頻繁に観測され、その空間スペクトルや波の回折現象が計測されている。長期問継続して表面波スペクトルを計測することにより、大気と海洋の相互作用を把握できるとともに、一方のイベントに対し他方に結果が現われるまでの遅れ時間が分かる。特に、台風などの場合においては顕著にその状況を把握することができる。回折現象については、ガルフストリームのような大規模海流によって表面波が回折されることが明瞭に観測されており、一定の条件下でその海流の流速を予測することも可能である。

(2)中規模流中規模流は東西境界流、渦、フロント、赤道波、湧昇などを指し、SAR画像上で不連続面あるいは筋状の線として見ることができる。これら中規模流は、海洋熱輸送、海洋循環に大きな影響を持っているほか、海洋生物学的な点からも重要とされている。

(3)海表面の風速SARは基本的には画像散乱計といえるものであり、ラジオメトリックなキャリブレーションをすれば、後方散乱断面積を計測することにより風速を知ることができる。
 ただ、この計測は、散乱計がそうであるように、界面活性物質の効果あるいは湧昇の

 

 

 

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