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4.2 SARによる海洋汚染観測と海氷状況調査の現状と展望

4.2.1 海洋汚染の把握への応用の現状と展開

 平成9年初頭に起きたナホトカ号からの重油流出事故は、わが国の日本海側に甚大な被害を与えた。こうした海洋の油汚染は、湾岸戦争時や今回のような大がかりなものだけでなく、タンカーの不法投棄によるものなど、小規模のものを含めるとかなり頻繁に起こっている。しかし、通常の光学的観測では、海面の油膜の発見は難しく、また、不法投棄の多くは夜間になされるなど、その実態把握は、なかなか難しい。これに対し、映像レーダ(SLAR)がこうした油膜の発見に効果的であることが知られている。

 海面は通常さまざまな波長スペクトルを持っている。これに斜めから電波が入射すると電波の波長と同相の海面波長成分が共鳴的な散乱を生じる(プラッグ散乱)。そのため、海面への斜め入射の電波に対して後方への散乱が発生するのであるが、海面に油膜があると、水の表面張力が低下し波長スペクトルが変化する。こうしてある電波の波長では清浄面にくらべ汚染面の散乱強度が低下する。映像レーダによる油膜探査の原理は、以上のように概要できるが、Xバンド帯を用いた実開口の航空機レーダでは、その有効性が確認されている。また、油汚染にかぎらず、たとえば赤潮なども、見いたされることが報告されている。

 合成開口レーダは、プラットフォームの運動によるトップラシフトを画像合成の原理としているため、海面の運動による効果が、画像中に反映され、一般にはその解釈が難しいとされているが、油膜の検出は可能であると考えられており、ERS−1等を用いた実験で問題点が明らかになってきている。衛星搭載レーダの最大の問題は、分解能であり、油汚染域を分解能ぎりぎりで判読するために、スペックルノイズをいかに処理するかが課題になっている。しかし、大規模な汚染がある場合には、その広域な探査性能が有効であるといえる。航空機搭載SARの場合には、油一膜の大きさにくらべ分解能が十分であれば、明瞭な検出が可能である。したがって、衛星SARの利用と航空機搭載映像レーダを有機的に組み合わせた観測形態による監視体制の整備が望まれる。

4.2.2 オホーツク流氷域の状況把握への応用と展望

 わが国の北海道東岸に毎冬接岸するオホーツク流氷は、北半球でもっとも南に存在する海氷であるが、その大きな特徴として、海氷のすべてが冬季にしかない一年氷であることや海氷上の気温が北極域の一年氷にくらべても高く、非常に不安定であることが挙げられる。これらの氷はシベリアのアムール川から流れてきた淡水氷により海氷が冷却されて比較的温暖な海域まで結氷することによる。また、この地域は季節風の影響を受け海面の結氷は海流や海上風に非常にセンシティブに運動する。したがって、

 

 

 

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