日本財団 図書館


 以上から、波浪、内部波、海流、海氷が本研究の対象となりうる。このなかで、回帰周期が数日から数十目近くある人工衛星データで解析を行うのに適しているのは、SARと完全に同期した観測が必要ない海象であると思われる。しかし、海洋における複雑な後方散乱から必要とする海域情報を抽出するためには、これらの海象にとらわれない研究が必要と思われる。
 以上のことを考慮して、次年度以降の研究の方向性を次項で検討した。

3.2 今後の展開

3.2.1 解析手法

 本年度の調査の結果、SAR画像データの前処理としては、スペックルノイズの除去のために4×4から10×10のフィルター処理を行っているケースが多かった。使用されているフィルターは「平均フィルター」が最も多く、ついで「ガウスフィルター」「移動平均フィルター」などが用いられていた。スペックルノイズ除去のための最適なフィルターは現在でも定まってはいない。1989年のERSDACの報告書によれば、「メディアンフィルター」と「平均フィルター」の評価が高かった。ただし、これらの評価は山岳地における地質調査を対象としており、また、評価方法も主観的な加点方式であるため、必ずしも海洋調査に適合するわけではないことを考慮しておかなくてはならない。実際にSAR画像解析を行う次年度には、フィルター処理についての研究も必要であると思われる。
 幾何補正については、収集した文献では処理を行っている例は4分の1程度であった。この理由としては、海面では幾何補正のための地上基準点(Ground Control Point:GCP)が取れないことがあげられる。本研究では、この点を考慮して、可能な限り画像内に陸地がはいるようなデータを取得する。ただし、地上の散乱特性などから完全に地形図に一致した幾何補正が行えるとは限らない。
 解析手法は「パターンの目視判読」「後方散乱のプロファイル」「後方散乱のヒストグラム」などが行われている。また、氷種分類手法として「数理形態フィルター」を用いた特殊な例もあった。目視判読では、SAR画像上に現れるパターンから波向や氷種の分類を行っている。プロファイルやヒストグラム解析においてSAR画像のデジタル値は後方散乱係数に変換されて用いられているが、対象物の状態により散乱特性が異なってくるため定量的な評価を行った研究例は少ない。
 本調査における解析手法としては、目視判読、プロファイル、ヒストグラムに加え、地上観測データと後方散乱係数との相関解析を行い、これらの手法について検討する。
 以下にデータ取得から解析までの手順を示す。

 

 

 

前ページ  目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION