第3章 まとめと今後の展開
3.1 まとめ
本年度は、海域情報調査に関するSARの利用実績を文献、ヒアリングを通して調査した。その結果、以下のような知見を得た。
光学センサと異なった原理で観測を行うSARは、地質、防災、農業、森林、雪氷、海洋、惑星探査などの調査で、様々な用途に使用できるのではないかと期待されている。海洋調査では、波浪、内部波、海流、海氷などの情報を抽出する可能性について研究されてきた。
波浪調査では、SAR画像に現れる線状のパターンに垂直な側線のプロファイルから波長を計測しており、長波長の重力波の観測可能性が示されていた(文献1.2.14)。
波浪調査を行う上での問題点は、SARによる観測と同期してシートゥルースを行えるかどうかである。今回調査した文献の中では、SEASAT、船舶、航空機などを同期させて観測したJASIN実験の観測結果を用いているものが多く見られた(文献1.2.3)。
その他の問題点としては、スペックルノイズに関するものがあげられる。海洋ではスペックルノイズが現れやすいため、ノイズの影響を軽減するためにフィルターをかけるが、フィルターのサイズを大きくすると波長の短い波浪を抽出できなくなる。ERS−1データでは、解像度を100mになるようにフィルターをかけた研究があった(文献1.2.14)。