2.2 ヒアリング
ヒアリング調査結果は以下のとおりである。
2.2.1 SARによる海氷情報抽出の可能性について
北海道教育大学教授 西尾文彦氏(平成8年11月11目)
・サロマ湖をテストエリアとして1993年よりSARと海氷の関係を解析している。この結果によれば、氷の分布を見るにはJERS−1(Lバンド)がERS−1(Cバンド)より有効であった。この理由は、入射角が小さく波長の短いERS−1は海上の波の情報を拾い、開氷面と海氷との区別が不明確になるためであろう。
・氷厚に関しては、ERS−1の後方散乱係数との間に負の相関が認められ、氷上の積雪状態と表面粗度が同一という条件のもと後方散乱係数から氷厚推定の可能性は期待できる。実利用を前提とすると、SARと積雪との関係を先に明らかにする必要があるだろう。
・SARの応用分野としてSARインターフェロメトリを利用して氷河や氷床の動的情報を得る試みがある。ただしインターフエログラム生成条件に定まったものがないことや元地形の情報が乏しいことにより今は研究段階である。
・SARの実利用の面からは、北極海における氷開航法の可能性の検討としてノルウェーをはじめロシア、カナダ等北極海沿岸国で研究が進められ、砕氷船のナビゲーションに応用されている。日本でもサハリン沖石油開発等を前提とした危機管理のために海氷のモニタリングを重要視すべきであろう。
北海道大学教授 流氷研究施設長 青田昌秋氏(平成8年11月14目)
・流氷情報は接岸期問中にかぎり、1日1回午前9時のデータを分布図として作成している。分布図は3箇所(枝幸・紋別・網走)の流氷レーダエコーを画像処理ソフトウエアにて合成したものである。この結果を出力しFAXにて地元漁協、気象庁、第一管区海上保安本部に送信している。さらに二次的な配布があるだろう。利用するとすればこれらの送信先からの利用を勧める。
・流氷レーダの他の流氷情報に関しては、不定期に気象庁と海上保安庁が航空機より目視観測を実施している。
・SAR利用に関しては、海氷の分布とくに流氷レーダの範囲外(沿岸から50km以遠)のモニタリングに有効であろう。ただし、沿岸域でのモニタリングを継続している立場からすると、海氷表面のラフネスや氷の形状とSAR画像パターンとの関連を調べることも有効であろう。