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 SARが民間用に供され始めたのは1970年に入ってからで、1978年にSEAS^Tが。打ち上げられるまでは航空機SARによる実験・研究が行われていた。主に地質分野での利用が研究される例が多かったが、1970年のArctic Ice Dynamics Joint Experiment(ADJEX)実験における湖水マッピングなども行われた。
 SEASATは初めてSARを搭載した地球観測衛星であり、主目的は海洋観測であった。このため、SARの海洋に対する利用可能性に関する実験が多く行われた。観測対象は、波浪、海流、内部波、海氷などであった。とくに海氷に関しては、1979年に北極海で行われた船舶・航空機・SEASATの同期観測(Joint Air−Sea Interaction:JASIN)実験によって、海氷解析に対するSARの有効性を示された。
 1980年代はSARを搭載した人工衛星は打ち上げられなかったが、SEASATやスペースシャトル搭載型SARであるShuttle Imaging Radar−A(SIR−A)(1981)、SIR−B(1984)のデータを利用した解析調査が行われていた。
 1991年にERS−1が打ち上げられると、同機に搭載されているマイクロ波散乱計やTOPEX/POSEIDON衛星に搭載されているマイクロ波高度計を用いて海上風や波高などの海況データを取得できるようになり、SARと併用した解析研究も進められている。
 海洋調査にJERS−1の利用事例が少ないのは、山岳地におけるレイオーバ現象を少なくする目的で、ERS−1などに比べてオフナディア角を大きくしているためである。このため、画像の衛星軌道に近い部分と遠い部分では、入射角の違いによって後方散乱が大きく異なり、後方散乱係数に基づいた解析が難しくなる。ただし、逆に海面における散乱の物理的パラメータが少なくなるため、考慮する物理量が少なくなるといった利点をあげている文献もあった。
 図2.1にSARを利用した研究のフローを、表2.3にSARを利用した実験のまとめを示す。

 

 

 

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