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2.1.5 文献読解

 JICSTから取得した39文献およびJICST以外の14文献について、著者、タイトル、出典,内容、結果等を調査表にまとめた。調査表は巻末資料として掲載した。
 衛星および航空機搭載型SARを用いた研究について文献等を調査した結果、プラットフォームとしては航空機が最も多く、ついでSEASATおよびERS−1を使用している場合が多かった。また、研究対象としては海氷、波浪、海上風、内部波などであった。
 海氷調査の目的は氷種の分類で、一年氷と多年氷を後方散乱の違いから分けており、海氷の表面が雪で覆われていても分類が可能であるとの報告も見られた。また、浮氷の動きから海流の流速を測定している研究や砕氷船の効率的運用のための調査にSAR画像を利用している研究も見られた。
 波浪調査では、沿岸域のSAR画像に現れる線状のパターンを目視判読し、パターンに垂直な側線のプロファイルから波向や波長を計測していた。この場合、後方散乱係数と各波浪のパラメータとの相関を取っている例は少なかった。この理由はSARのレンジ方向と波向によって後方散乱が変わるために定量的な解析を行えないためと考えられる。
 海上風はSAR画像で直接測定するのではなく、波浪調査の結果から推定している例が多かった。また、マイクロ波散乱計などSAR以外のマイクロ波センサを利用することで、海上風の測定を行っていた。ただし、マイクロ波散乱計などは点での観測結果であり、このデータとSAR画像とを比較する研究がなされていた。
 内部波調査の文献では、CバンドのSAR画像に見られる海面の波浪とは異なる波長・パターンの波が内部波であると証明するものが多かった。そのために、海底地形やブイなどによる観測結果から理論モデルを構築し、内部波がSAR画像に現れるメカニズムの研究を行っていた。また、収集したアブストラクトには内部波のパターンを利用した海底地形調査などを行った報告も見られた。ただし、いくつかの文献でも触れられていたように、内部波は必ずしも常時SAR画像で観測されるわけではない。

2.1.6 SARを利用した研究

 レーダ技術は1940年代から発達してきているが、初期は軍事目的に利用されているため、研究成果の公表は行われていない。レーダ技術が一躍脚光を浴びるのは、パナマ地図作製(Radar Mapping of Panama:RAMP)計画の時である。常時雲に覆われており20年近く航空写真による地図作製が行えなかったパナマで、航空機搭載型サイドルッキングレーダ(Side Looking Airborne Radar:SLAR)を用いてわずか4時間で25万分の1図を作成することができたことにより、レーダ技術の実用化が進んだ。SLARは実開口レーダ(Real Aperture Radar:RAR)とSARに分かれる。RARはSARのプロトタイプとなったものであるが、現在では航空機・衛星問わずSARの方が多用されている。

 

 

 

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