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?Y 業績評価と賃金格差

さて、企業の人事管理の最終目標は、従業員の勤務業績を(人事考課制度により)公正に評価して昇進や賃金決定を行い、企業業績を最高に高めるようにすることである。実際、人事考課制度の目的を調査した平成6年度の本調査では、「能力・実績に基づく公正処遇の実現のため」が93.2%と殆ど全ての企業で挙げており(次は「社員の目標意識を高めるため」が66.7%)、その結果として業績評価の昇進・昇格と賃金への影響は「大いに影響する」と「影響する」がそれぞれ(46.9%と48.6%)及び(48.2%と47.3%)と全面的に−それも賃金の方がやや強く−影響させるようにしているとのことであった。この調査結果を踏まえて平成7年度についての昨年の本調査では、「過去2年間の従業員の業績を反映した賃金格差の動向及び今後の方向」を調査したところ、過去2年間に格差を「拡大するようにした」が38.5%、「おおむね従来と変わらない」が61.5%であったのに対し、今後の方向としては「おおむね変わらない方向」は16.6%に過ぎず、「今後拡大させる方向」が72.9%と圧倒的な流れとなっていた。そこで今回は、現在人事管理の具体策として最大の問題となっているこの業績評価と賃金格差を調査することとし、具体的対応として、賃金の上下格差が拡大するような人事考課制度又はその運用の設定変更の状況や今後の方向等について尋ねることにしました。
1. この2年間の人事考課制度における賃金の上下格差拡大〔第82・83表参照〕

この2年間に人事考課制度又はその運用を、賃金の上下格差が拡大するような設定に変更したのかどうかを尋ねたところ、「拡大するように制度を変更した」と回答した企業が32.0%、「制度は変更していないが、運用で格差が拡大するようにした」企業が26.2%あり、賃金の上下格差が拡大するようにした企業は合わせて58.2%と約6割にも上っていた。なお、「変更せず、運用も従来どおり(現行でも十分格差がつく設計となっている)」は18.4%であった。
これを規模別にみると、当然のことながら大企業ほど変化には制度で対応することとなるので「拡大するように制度を変更した」のは「5千人以上」で40%だったのに対して「千人未満」では18%と規模が大となるほど回答割合が高くなっており、逆に「変更せず、運用も従来どおり(あまり格差は出さない政策である)」と回答した企業は、「5千人以上」が11%だったのに対して「千人未満」では34%と、規模が小となるほど回答割合が高くなっていた。
また、産業別にみると、「拡大するように制度を変更した」と回答した産業は「電気・ガス・熱供給、水道業、サービス業」で52%と過半数を超えていた(他は2〜3割台であった。)が、同産業では他方で「制度は変更していないが、運用で格差が拡大するようにした」と回答した企業は5%と極端に低い割合となっていた。なお、その他の項目では産業の違いによる回答割合の大きな差は見られなかった。

 

 

 

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