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(28%)でそのうち観光目的で島を訪れた人は18例、その多くは、水泳、釣り、ダイビングなどのマリンスポーツ中に発生したもの(外傷、溺水など)であった。

紹介目的別の分類では、紹介患者をまずReferral群とConsultation群に分類した。その基準は紹介した時点の診療録やその後の経過などをもとに、調査集計時に判断した。結果はReferralが82%と多数みられ、その理由として離島では各種検査や入院設備がなく、それらを他の医療機関へ依頼せざるを得ないためと考えられた。また、その内訳では入院治療、専門外来のほかに転医のための紹介が比較的多くみられたが、これは県外や沖縄本島からの観光客が滞在中に外傷を負い、地元へ戻るにあたり創部の消毒や抜糸、あるいは骨折のフォローアップを依頼するための紹介で、観光地である座間味島に特徴的な紹介パターンであると思われた。

Consultationの場合はほとんどの患者が島内在住者で紹介後も引き統き診療所が治療の中心となる。そのことを患者に説明して、いわゆるドクターショッピングの状態に陥らないように注意を払うことが必要である。また、患者にとっては必ずしもすぐに受診しなければならない状況でないことも多いため、症状が改善すれば自己の判断で受診をやめるケースも見られた。

紹介先が親病院以外にも多数の施設に及んだが、この理由としては患者の希望によるもの、島外からの患者が多いこと、そして夜間、休日における那覇地区の2次救急の受け人れ体制が3施設による輪番制をとっていることなどが挙げられよう。県内の紹介先施設は、いずれも沖縄県の設定する2次保健医療圏(南部保健医療圏)に含まれたが、慢性心房粗動でカテーテルアブレージョンの適応となった1例だけがさらに第3次診療機関への紹介となった。

親病院と離島診療所との連携については、定期的に行われる診療所医師連絡会議で話し合いを重ね、離島医師不在時の代診の問題や、外来検査予約の簡略化、そして検査室や薬局ともさらに密接な連携がとれるように努力が行われている。

返信率は今回の調査では63.6%と他の文献に比べ低い値を示した。この原因として、紹介先施設が散らばり面識のない医師へ紹介することが多いこと、島外在住患者をその地元へReferするなどの理由が考えられた(対照的にConsultationの場合は全例で返信があった)。

患者にとって継続的な治療を受けるためには離島での主治医と高次医療機関との間に密接な連携が求められてくる。その際に紹介状や返書が重要な役割を果たすことは言うまでもないが、同時に臨床経験の多いとはいえない我々離島の医師にとっては、自分の判断や治療方針などを専門医に評価してもらう機会を持つことは、1つの症例から多くのことを学ぶことにもつながるので生涯教育の面でも得るものが大きい。従って紹介する側の立場からみれば、その後の経過や診断、治療に関する何らかの情報が返信されてくることを期待して紹介することが多いが、現状は満足できるものではない。

一方で、返信率の向上のためには紹介状に工夫を加えるなどの努力も必要である。具体的には、診療所での投薬内容はもちろんのこと、紹介した時点での診断及びマネージメントの根拠を記載し専門医の意見を求めるような形を取ったり、治療中の管理責任の所在について言及したり、臨床経過や杜会的背景が複雑な患者の場合はプロブレムリストを作成するなど、紹介先医師の心に留まるような有用な情報を提供すべきである。

また、平成7年度から運用が開始された沖縄県保健医療情報ネットワークにより、県内の各県立病院とその附属診療所にパソコンが設置され、医療をはじめとする各種の情報交換に利用されている。そのネットワークの電子メールを利用して紹介患者に関する返信をする医師も見られるようになっており、今後もその活用が大いに期待される。

ヘリコプターによる救急搬送患者は、溺水が当番医師添乗1例を含む2例、子宮からの動脈性出血によるショックや急性虫垂炎などの緊急の処置を必要とするものから、骨折などで他の搬送方法が不適当と判断してヘリコプターを利用した比較的緊急度の低い症例まで幅広くみられた。ヘリを要請する基準は本永の主張するようにそこで判断する医師の能力如何にかかっているため、特に緊急度が低いからといってヘリ搬送が必要だったか否かという議論は適切とはいえず、むしろこの結果も診療評価の一面としてとらえ今後の診療活動に生かすべく研鑚を積まなければならないと考える。

 

 

 

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