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過疎・高齢・少子化が進む千葉県安房地域に於ける地域包括医療体制の実現を目指して

千葉県・鴨川市立国保病院院長 中村宏

要旨

千葉県の南端に位置する安房地域は65歳以上の高齢者の占める比率は既に24%を超え、早くも超高齢社会を迎えており、高齢者対策は急務と成っている。私達の国保病院を経営する鴨川市は高齢化比率は県内31市中のトップで、23.4%に達している。この様な地域での地域包括ケアシステム構築への試みを提示し、今後の地域の在り方を検討した。
鴨川市は人口3万1千人弱の小都市にもかかわらず医療は過密で人口21人に1べットの割合で病床配備が行われている。当初は各医療機関がバラバラに在宅医療を行っていたが、保健所の仲介で各組織間の壁を取り除くべく自由な立場で参加出来る"ケアワーカーの集い"が形成さ、地域ケアシステムの在り方が検討された。一方、市でも保健福祉総合センターを開設し地域ケアシステムの中心として位置づけた。そして在宅介護支援センターを併設して各組織間のコーディネート機能を期待して、現在安心して老後を過ごせる地域作りに取り組んでいるところである。

I.はじめに

日本は今急速に高齢化社会を迎えている。そして65歳以上の高齢者の占める割合は1994年に早くも14%に達し、今の日本は高齢社会そのものと言える状態にある。この様な状況の下で国は平成元年よりゴールドプランの名の下に来たるべき超高齢社会に向けての社会資源の整備に取り組み、10年間で達成すべき努力目標を設定して各市町村単位での目標達成に向けての努力を促している。そしてその努力目標値も不充分との判断の下に、平成6年には前年度中に作製された地域老人保健福祉計画の集計結果を元にして新たなる各種高齢者保健福祉施策の整備拡充を目標に、新ゴールドプランの策定が行われた。そして現在ではそのサービス提供をスムーズに達成させ得る為に、公的介護保険制度の確立が検討されている。そして来たるべき21世紀の超高齢社会においても、日本国民が安心して誰でも幸せな老後を送れる地域社会作りの努力が成されている現状である。

II.次に、私達の病院を開設している鴨川市と、安房地域の現状と将来の展望を試みる

A.千葉県の南部に位置する安房地域医療圏は総人口約15万4千人で、千葉県全体の人口の2.6%を占めるに過ぎない。そして当圏域の高齢化比率は既に24%を超え、早くも来たるべき21世紀の日本の超高齢社会の先取りをしている。そして私達の病院を経営している鴨川市は、人口3万1千人弱の地方の小都市であり、高齢化率は既に23.4%に達し、県内31市中最高の高齢化比率を呈している。しかし医療の現状は特異で、地方の小都市であるにもかかわらず非常に過密状態にあり、市内医療機関のべット数の

 

 

 

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