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今後、画像電送のネットワーク化を図るためにも統一規格の画像電送システムを導入することが望まれる。

近年、コンピュータや関連機器、そして通信技術により、画像電送システムは、高速、高解像、動画電送を各企業で開発に凌ぎを削っている。これは将来的にすばらしいことであり、また、これらの先端技術は国立がんセンターにおける「コンピュータネットワークシステム」として十分活用されている。しかし、地域で医療用機器として利用するばあい、通信速度、解像度がどの程度その施設で要求されるか、また、動画電送が本当に必要かどうかよく吟味し、コストパフォーマンスを十分考慮し購入設置してほしい。

当院では、脳神経外科と整形外科疾患での利用が多く、電送資料もほとんどが頭部CTと四肢の単純X線写真であるため、これらの資料を最低限電送できるシステムであれば、離島を含む遠隔地での使用においては十分であると考える。

すなわち、離島を含む遠隔地で新たにシステムを導入しようと考えたときに、ハイビジョン(High-definition Television)や光ファイバーケーブルを使用した高画質のカラー動画電送はコストパフォーマンスを考えると現在のところあまり必要ないのではないだろうか。実際、胸部単純X線写真は、モニター画像では淡い肺陰影や小陰影の読影は困難とされている。そのため、当院では救急以外で専門医による詳しい読影が必要な症例、たとえば、胸部単純X線写真で直径10mm程度の淡いcoin lesionや炎症性変化、頭部CT写真でlacmar strokeなどの微細な病変の読影に際して十分な解像度が得られないと考えられる場含は、救急性がないこともあり、直接写真を郵送して専門医へconsultationするようにしている。

このように画像電送システムは、単にデバイスとしての性能を上げることよりも、それをどのように有効に活用し、運用してゆくかにかかっていると考える。
また、当院では、1996年1月から月2回、札幌医科大学の機器診断部と画像電送システムを利用して、医学生を対象に症例報告形式によるカンファレンスを実施している。これは同システムを弾力的に運用し、医学教育の一環として、その有用性を理解してもらおうという試みである。

将来的には互換性や普及性を考慮するとインターネットやパソコン通信上で、電子メールを送るように、デジタル信号で記憶された微細病変まで診断できる高画質高解像度の画像を電送できるのが理想である。現在、医療情報システムの開発・普及のために、通産省と厚生省は、共同管轄である(財)医療情報システム開発センター(略称;MEDIS)への委託事業などにより、各種のモデル事業を実施している。この事業の実用化および普及により、近い将来、われわれの理想は現実になるであろう。
現段階では、低コストで最低限救急搬送時に活用できる統一規格での画像電送システムが離島を含む遠隔地に広く設置されることが望まれる。

おわりに

当院の後方支援病院としてわれわれを常にバックアッブしてくださっている市立稚内病院の医師、放射線技師、看護婦、およびその他のスタッフに深く感謝の意を表します。

参考文献

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3)尾畑弘美、中田宏志、阿部昌彦他;利尻島における救急患者島外搬送の実態。日本救急医学会雑誌1991;2(4):700-708.

4)西野徳之、後藤博之、小坂実他;利尻と救急医療。利尻島国保中央病院十年のあゆみ、1995;31-47.

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(旭川医科大学 〒078 北海道旭川市西神楽4線5号)
(市立札幌病院 〒060 北海道札幌市中央区北11条西13丁目)

 

 

 

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