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は、〔2−2〕に記述したような国内法制が存在する。これに対して、国連海洋法条約を受ける純粋な海洋科学調査の法的スキームは、相当に異なったものになる筈であろう。しかし、報告者が現行の国内法令を一瞥するところ、海洋科学調査を正面から規律するような国内法は見当たらない。従って、海洋科学調査に関する国内法令の在るべき姿を構想するための準備作業として、一般的に海洋上で一定の措置を行うための国内行政法理論を検討したり、海洋科学調査に類似ないし隣接する事項に関する国内法令を渉猟する作業が必要になる。以下、節を改めて、順次検討を進めたい。
 
〔3〕大陸棚・排他的経済水域で措置を行うための法的根拠
〔3−1〕法的根拠の必要性
わが国の大陸棚・排他的経済水域において、外国船が「同意」を得ることなく「海洋科学調査」を行なっている場合、ないし、「同意」は得ているものの資源調査を行なっている疑いがあるような場合に、日本の行政機関(執行機関)は具体的にどのような措置を行なうことができるのであろうか。
この点について、「海洋科学調査」を行なっているのが、?日本の船舶・航空機等、?外国の船舶・航空機等、?人工衛星等、といった場合が考えられる。上記?の日本の船舶・航空機等による調査については、純粋に国内法令の問題となるのは当然であろう。しかし、例えば日本の調査機関が収集したデータを第3国に売却するとか、外国の委託によって科学調査を行なうという場合も想定されるところであり、外国船舶等による調査との線引きは単純ではない。いずれにしても、右については、「海洋科学調査」に関する国内法令の整備の問題になるであろう。さらに、上記?の、人工衛星等によって宇宙空間から海洋科学調査を行うという局面については、現実の重要性から言って、何らかの法的措置が必要とも思われる。しかし、宇宙空間での調査活動については、「その活動の特異性から沿岸国による規制権限の実効性は期待することができず」、「宇宙活動を規制する条約等の別個の規制を俟つ必要がある」とする国際法学者のコメントもある(4)
本報告の課題という意味では、上記?のケースヘの対応が問題になる。平成

 

 

 

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